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冥王来訪
第二部 1978年
狙われた天才科学者
先憂後楽  その4
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に身を置いて欲しくない。まだお前は花開かぬ青いつぼみだ。
暖かい春の日差しも、花を咲かせるような夏の太陽も、実を()らせる秋も知らない。
願えば、どんなことでも出来る。
兄の為とか、こんな傾いた国の為とかと言って、軍に残って、衛士などという馬鹿げた事をする必要はない。
女の一生を、そんな一時の自己満足の為に、棒に振る様な必要は無かろう」
ガスライターで火を点け、紫煙を燻らせながら、
「男は、この世に生まれて以来、己の大義に、己の正義に殉じるのが宿命。
俺も、俺自身の野望の為に、あえて、剣の中に身を置き、魑魅魍魎(ちみもうりょう)どもと戦っている」
静かにうつむいた顔を上げ、
「だが、女は違う。
幾千年の歴史の中で、志に(じゅん)じて死んでいった男達を横目に見ながら、その命を長らえて来た。
何時しか許され、その命を(まっと)うしてきた。また許される存在なのだ。
だから、高い理想のために働くなどではなく、どの様に生きるかを考えるべきではないか。
もう少し、女らしく自由に生きてみよ」
と、どこかあどけなさの残るアイリスディーナの表情を見つめ、俄かに彼女を抱き寄せる。 
咄嗟に、彼女のうけたマサキの唇は、炎のように熱かった。
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