第二百七十二話 戦に向けてその十三
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「あの人はいざとなれば腹を括って」
「覚悟を決めるな」
「そうしたところがおありで」
それでというのだ。
「解決案を考えても」
「結構途中で諦めてな」
「腹を括って」
まさにそうしてというのだ。
「運命に委ねる」
「だから西南戦争だってな」
「担がれました」
「そうだよな」
「あれが大久保さんならです」
「それでも止める様にな」
「考えていましたが」
そうしていただろうというのだ。
「流石にああなっては戦争を止めるのは難しいでしょうが」
「最悪の事態は避ける様にな」
「答えを出していたでしょうが」
それでもというのだ。
「西郷さんは覚悟を決めました」
「そこも西郷さんの魅力でもな」
「器も大きくて」
「けれどな」
それがというのだ。
「大久保さんとの決定的な違いだな」
「左様ですね」
「だから大久保さんが必要だったのです」
「軍師としてな」
「そして結局大久保さんも」
「西郷さんが必要だったな」
「あまりにも鋭利で威圧感に満ちていたので」
それが大久保利美という人間だった、才気に満ちかつ冷静沈着だったがそれがそうした一面にもつながっていたのだ。
「周囲からはです」
「どうもよく思われていなかったな」
「はい」
「だから大久保さんに仕事持って行くの嫌がられたんだな」
「山本権兵衛さんだな」
芳直が応えた。
「西郷さんに仕事を終えて持って行くとな」
「手放しで大喜びで褒めてもらえたんだったな」
「それが大久保さんだとな」
「細かいところまで憮然とした顔でチェックされて」
「ああだこうだ言われてだ」
まさに西郷とは真逆にだ。
「かえって仕事が増える」
「そうなっていたな」
「そうした人がトップだとな」
「やっぱり嫌だな」
「だから西郷さんがいてな」
まさに人の上に立つべき器である彼がだ。
「よかった」
「そうだな、まあ俺は西郷さんと比べるとな」
久志は笑って話した。
「到底な」
「及ばないか」
「あんな凄い人じゃないさ」
笑ったまま話した。
「到底な」
「そうか」
「ああ、けれどな」
「全力でだな」
「やることやるさ」
例え西郷には到底及ばずともというのだ。
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