第一話 開幕その三
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「是非」
「ですが」
「いえ、それは私の願いだけでなく」
「姉さん、ですか」
昴流は老婆の言いたいことを察して応えた。
「お祖母様だけでなく」
「そうですさかい」
「戦いを生き残り」
「そうしてです」
そのうえでというのだ。
「帰ってきて下さい」
「そうしないといけないですか」
「あの娘の為にも」
「わかりました」
昴流は遂にという感じで祖母の言葉に頷いた。
「それでは」
「はい、待ってます」
「約束は出来ませんがそうなる様にします」
こう言ってだった。
昴流は東京に赴いた、彼もまた運命に向かうのだった。
赤く波がかった耳を完全に隠す位の長さで切り揃えた整った目に小さな頭の見事なスタイルの妙齢の女がだった。
今教会で神父に厳かな声で告げていた、赤い竹の長いワンピースの服を着ている。
「これで」
「行かれますか」
「はい」
そうするというのだ。
「これより」
「そうですか。ですが」
「命を賭けてもですか」
「必ずです」
初老で白髪をオールバックにしている神父は優しい声で言った。
「またここにです」
「神に祈りをですか」
「捧げに来てくれますか」
「そうなる様にします」
女は神父にやや俯いて答えた。
「出来るだけ」
「そうですか」
「はい、私はこの教会で救われたので」
だからだというのだった。
「ですから」
「それ故にですね」
「神父様がそう言われるなら」
「戻って下さいますか」
「はい、その様に」
「夏澄火煉さん」
神父は彼女の名前を優しい声で呼んだ。
「貴女は神の僕です」
「紛れもなくですね」
「はい」
まさにというのだ。
「迷える子羊であり」
「悪魔でなくですね」
「そうです、ですから」
「戦いが終わればですね」
「お祈りをして下さい」
「そうなる様にします」
火煉は神父に答えた、そうして礼拝堂で神に祈りを捧げてから境界を後にしその足で行くべき場所に赴いた。
茶色の整えた髪に眼鏡をかけた長身でスーツを着た知的な顔立ちの青年は今詰襟の制服を着た薄茶色の髪の毛にまだ幼さが残るが端整な顔立ちの高校生程の少年と向かい合って喫茶店の席に座ってケーキを食べつつ話していた。
「遂に、ですね」
「時が来たんですね」
「はい、それで玳透君はですね」
「姫様をお護りします」
少年は強い声で答えた。
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