第二百七十一話 調べ終えその十
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「それだけでな」
「美味いな」
「ああ、そしてな」
そのうえでというのだ。
「特にあれだよ、ご飯の中に埋めたな」
「大坂の鰻丼だな」
「いづも屋のな」
織田作之助の夫婦善哉でも出て来る店だ、今はもうないがその名を受け継いだ店が船場にある。そうした意味でこの店の味はまだ生きている。
「あれがな」
「お前は好きか」
「そうだよ、けれどな」
「西の浮島ではな」
「それもなくてな」
久志は英雄に寂しそうに話した。
「残念でな、そしてな」
「鮪もだな」
「刺身にして食って」
そうしてというのだ。
「今みたいにな」
「カブト煮もだな」
「なくてな」
それでというのだ。
「今こうして食えてな」
「嬉しいか」
「あっちの料理も美味いのが多いよ」
「鰻のゼリーは置いておいてだな」
「あと鰊のパイもな」
久志はこの料理にも駄目出しを行った。
「そうするけれどな」
「それでもだな」
「美味いものも多いんだよ」
「魚介類のそれもだな」
「ああ、けれどな」
それでもとだ、久志はあらためて話した。
「こうした料理はなくて今食えるのがな」
「嬉しいか」
「それで仕方ないぜ」
英雄に笑顔で話した。
「本当にな」
「そうなんだな」
「じゃあ食わせてもらうな」
「遠慮は無用だ」
英雄はその久志に話した。
「どんどん食え」
「そうさせてもらうな」
「それではな、それとだが」
英雄はさらに言った。
「魚の頭はそれこそ骨以外はだ」
「全部食えるな」
「唇や目も美味くな」
そうした部分もというのだ。
「そして脳もな」
「そっちも美味いな」
「魚はアラも美味いが」
「頭だってそうだな」
「鱧や甘鯛も頭は吸いものにするが」
これがまた実に美味い。
「だしを取るだけでなくな」
「頭も食うといいよな」
「美味いからな」
それ故にというのだ。
「そうすべきだ」
「鱧な」
この魚についてもだ、久志は話した。
「俺あの魚も好きなんだよ」
「美味いな」
「小骨が多いけれどな」
鱧の特徴の一つだ、その為骨切りの技術が生まれたのだ。
「美味いよな」
「鱧は鱧でな」
「ああ、それで鱧の吸いものもな」
「お前は好きか」
「ああ」
今は鮪の頭を食べつつ答えた。
「それで頭もな」
「食うな」
「あれを食わないでね」
鱧の吸いものの時に頭を食べずしてというのだ。
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