第八十二部第五章 撤退する者達の焦りその七
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「放っておくのだ」
「いいのですか」
「真相に気付いた兵がいても」
「それでもですか」
「真実でも噂は噂だ」
それに過ぎないというのだ。
「だからだ」
「よいですか」
「それで、ですか」
「構わないですか」
「噂ならば」
「それならば」
「噂を打ち消すとな」
若しそうすると、というのだ。
「かえってよくない、打ち消された噂を見て人は疑う」
「それが真実ではと」
「その様に思って」
「それで、ですね」
「人は噂にのめり込む」
「そうなってしまいますね」
「噂は放っておくのが一番いい、放っておけば誰もが実は何でもないものなのかと思う」
それが例え真実でもというのだ。
「ならだ」
「ここはですね」
「構わずですね」
「それで、ですね」
「ここは否定せずに」
「肯定もせず」
「置いておきますか」
「そうする、しかも噂はしていても」
兵士達がそうしていてもというのだ。
「誰もが他のことに目を向けているな」
「はい、次の戦いに」
「誰もがそれに目を向けています」
「心も」
「そうしています」
幕僚達もこう答えた。
「ティムール軍は撤退を続けています」
「ですが間もなくその先頭は彼等の第二次防衛ラインの予想ラインに入ろうとしています」
「既にそこにはティムール軍のコロニーレーザーや機雷が集まっています」
「彼等があそこで戦うことは間違いありません」
「あそこで我等を迎え撃ち」
「そうして再び戦うつもりです」
「今度は前回以上に宙形を使い」
そしてというのだ。
「戦うつもりだ」
「左様ですね」
「それではですね」
「次の戦いでもですね」
「あれを使いますね」
「そうしますね」
「まだシャイターン主席は復帰していない」
彼のことも言うのだった。
「ならだ」
「まさにですね」
「使いどころですね」
「今こそ」
「次の防衛ラインでの戦いも」
「彼ならば見破る」
アッディーンは確信を以て言った。
「間違いなくな、しかしな」
「それでもですね」
「シャイターン主席がいないなら」
「それならばですね」
「使ってもですね」
「見破られないですね」
「だから使う、ああした兵器は見破られるとだ」
その時はというのだ。
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