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イベリス
第七十七話 夏休みの勉強その十四

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「ああしてな」
「お金や地位があっても」
「なくすんだ」
「そういうことね」
「そういうものがあってもちゃんとした人じゃないとな」
「なくすのね」
「そうだ、あの元プロ野球選手もいい例だ」
 今話していることについてのというのだ。
「本当にな」
「馬鹿過ぎるとってことね」
「普通の馬鹿なら助かるんだ」
 父の言葉は真摯なものだった。
「それが餓鬼にまでなるとな」
「助からないのね」
「人間じゃな」
「人間だと?」
「餓鬼を救えるのは仏様だけだろうな」
 こう言うのだった。
「人間だとな」
「今お話している通りに」
「無理だ、かえって碌なことにならない」
「文句言ってきて」
「正しいことをまともに見られないからな」 
 これもまた餓鬼の特徴だというのだ、餓鬼道はそうして邪な道に堕していってなるものであろうか。
「人間だとな」
「救えなくて」
「仏様でないとな」
「救えないのね」
「地獄に仏と言うな」 
 この言葉も出したのだった。
「仏様は地獄にもだ」
「来てくれるの」
「六道と言うがその世界全てにな」
「来てくれて」
「助けてくれるんだ」
 輪廻の中にあるその魂をというのだ。
「そうしてくれるからな」
「地獄にも来てくれて」
「餓鬼道にもな」
 この世界にもというのだ。
「来てくれてな」
「餓鬼もなのね」
「救って下さる、しかし人間だとな」
「餓鬼は救えないのね」
「生きものは救えてもな」
 それは出来てもというのだ。
「そこまでだな」
「モコは救えても」
「一家三人いればモコを幸せに出来るだろ」
「実際にしてるわよね」
「だからモコは家族に懐いてるんだ」
 父は微笑んでこのことも話した。
「咲の妹としてな」
「家族として」
「そうだ、幸せを感じているからな」
「皆に懐いてくれてるのね」
「そうだ、人間は生きものを幸せに出来るんだ」
「人間を幸せに出来て」
「生きものは畜生道にいるというな」
 その六道からまた話した。
「それは出来るんだ、多分人間界とその生きものの世界の間にあるな」
「修羅道ね」
「そちらもな」
 そこの道にいる者達もというのだ。
「救えるな」
「戦いばかりの人達も」
「そうだろうな」 
 こう娘に話した。
「戦いは案外せずに済むしな」
「無闇にね」
「気持ちを落ち着けさせてだ」
「穏やかにすれば」
「それでかなり違うしな」
 それでというのだ。
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