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展覧会の絵
第十五話 ユーディトその十二

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「わかったな」
「有り難う・・・・・・」
「御礼もいいんだよ。お医者さんには風呂場で滑ったとか言っておくからな」
 自殺しようとしたことも隠すというのだ。全ては望の気遣いだった。二人もこうして救われた。
 十字は風呂場には入らなかった。その物陰から二人を見ているだけだった。そしてだ。
 彼は二人を見届けるとそのうえでだ。春香の家を後にした。そのうえでだ。
 自身の携帯を取り出し神父に電話をした。そこで言うことは。
「無事にとは言えないけれどね」
「そのお二人もですね」
「救われたよ。救いは果たされたよ」
「それは何よりです」
「そして後は」
 十字のその黒い目が光った。闇の中で。
「裁きの代行を行うよ」
「ではそちらも」
「既に用意はできているね」
「はい」
 神父は十字にすぐに答えた。
「何時でも」
「わかったよ。今回は時間もあるからね」
「いつもよりもですね」
「いつも裁きの代行は極限まで行っているけれど」
 あの人豚や藤会の面々に対してした様にだ。そうしているというのだ。
「あの七人にはね」
「ゆっくりと時間をかけてですか」
「この世に生まれたことを後悔し。地獄においてもその精神が永遠に破壊される様な裁きの代行を下すよ」
 無表情で言う十字だった。ここでも仮面は被っていた。
 その仮面のままでだ。彼は言うのだった。
「そうするよ」
「では明日からでも」
「まずは彼等に敗北の味を教えてやり」
 それからだというのだ。
「恐怖と絶望、苦痛を教えてやるよ」
「それもまたいつも通りですね」
「裁きの代行にはそうしたものが必要だからね」
 それ故にだというのだ。
「だからこそ。いつも通りね」
「神は慈愛と共に裁きも与えられるからこそ」
「悪には惨たらしい死を」
 十字は言った。
「そうしなければね」
「その通りですね。それでは」
「そちらにもかかるよ」
「いよいよですね」
「待っていたよ」
 感情は見せないがだ。十字は確かに言った。
「今回もね」
「枢機卿は悪には容赦されませんね」
「それが務めだから。何よりも」
 務め以上にある理由もだ。十字は神父に述べた。
「悪を許せないと思っているからね」
「では。そちらを頑張って下さい」
「そうするよ」
 こう言ってだ。十字は自分の携帯を切った。そうしてだった。
 今は務めを終えて神父がいるその教会に戻った。そしてそのうえでだ。この日は休み彼が待ち望んでいた彼の第一の務めにかかるのだった。神の裁きは下っていた。


第十五話   完


                  2012・5・12
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