第十五話 ユーディトその六
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すぐに気持ちを取り直したのかだ。こう言ったのだった。
「じゃあまたね」
「うん、明日からは多分ね」
「部活大丈夫なんだね」
「塾もね。ただね」
「ただ?」
「あの塾は変わるよ」
こんなことをだ。十字はふと言ったのだった。
「それもかなりね」
「変わるって?」
「そう。変わるよ」
「どういうこと、それって」
「僕が思うところだから」
どう変わるかはだ。十字は言わなかった。親しくなっている和典にも彼の紅の姿は見せなかった。彼の神の僕としての姿はだ。
そのうえでだ。こう言うのだった。
「それだけだよ」
「ううん、そのことは訳がわからないけれど」
「そうなんだ」
「まあいいけれどね」
和典は自分にとってそんなに影響のある話ではないと判断してだ。十字にこう返した。
その彼の返してきた言葉を受けてだ。十字は最後に言った。
「今日はこれでね」
「うん、また明日ね」
和典は何でもないといった調子で別れの言葉をかけた。だが十字は。
その白い詰襟のままで街の中に姿を消した。そうしてだ。
まずは雅の家に向かった。その家の前に来ると。
雅は寝巻き、白いパジャマ姿のままでふらふらと家を出た。目は虚ろで何も見てはいない感じだ。
そのままふらふらと何処かに歩いていく。それを見てだ。
希望はその家の隣にある猛の家、道場であるその家に入った。そうしてだ。
今もベッドの中にいて動かない猛の傍に来てだ。こう囁いたのだった。
「起きるんだ」
「・・・・・・・・・」
「起きるんだ、江崎猛君」
「誰?」
「君を助ける者だよ」
名乗らずに気配も消している。そのうえでの言葉だった。
「君をね」
「僕を?」
「外に出るんだ」
十字は猛に言う。
「外に。すぐに」
「何で外に出ないといけないの?」
「君がそれで助かるからだよ」
それ故にだとだ。十字は猛に囁いていく。
「だからね」
「僕がそれで助かる」
「そう。だからね」
十字は話していく。
「起きるんだ。いいね」
「けれど僕は。それに」
「彼女のことかな」
「何で知ってるの?雅のこと」
「神は何でも御存知だからね」
「神様。じゃあ君は」
「神ではないよ」
このことは断るのだった。十字は己を神の僕と考えているが神とは決して考えてはいない。彼にとっての神は唯一の存在だからである。
「けれど神が観ておられるから」
「だから。僕は」
「起きるんだ」
ここにも言葉に感情はない。しかしだった。
十字は猛のその心に囁き続ける。そうしてだった。
猛にだ。また言ったのだった。
「いいね。起
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