第十四話 泣く女その十三
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。神父は言った。
「あの絵も私は好きなのですが」
「そうだね。僕もね」
「好きですね、枢機卿も」
「その時代の絵も描いているよ」
十字は様々な絵も描いているがだ。その青の時代の絵もだというのだ。
「今もこの画廊にあるけれどね」
「ではその絵も観させてもらっていいでしょうか」
「いいよ。ピカソの絵も描いているから」
「ではその絵も」
神父は粛々と頷きそうしてだ。
彼等は二人でそのピカソの絵を見ていった。夜の画廊で。
そしてその夜の後でだ。十字は教会から学校に出る時にその神父に言った。
「今日からね」
「まずは救いですね」
「裁きの代行より前にね」
「おそらく。今日にでも」
十字の表情は変わらない。声の調子も。
だがそれでもだ。その声に何かを宿らせてだ。そのうえでの言葉だった。
「彼女達はね」
「自らですね」
「そう。その命を絶つかも知れない」
その危惧を感じていたのだ。何よりも強く。
「彼女達の心は壊れてしまった。それなら」
「その壊れた心のままに」
「その命まで壊すかも知れない」
「自ら命を絶つことは罪です」
神父はキリスト教の教えの中でも特に重要なものの一つを口にした。
「それは神に対する罪です」
「そう。だからこそね」
「何としても救わなければなりませんね」
「だからこそまずは彼等だよ」
彼女達だけではなかった。十字は今彼等とも言った。
「神は罪のない子羊を救われないことはされない」
「決して」
「だからこそその代行者である僕も行くよ」
「では」
神父の見送りを受けてだ。十字は教会を後にした。そしてそれがだ。まさに神の救いの代行となるのだった。彼の務めの一つである。
第十四話 完
2012・5・4
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