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冥王来訪
第二部 1978年
狙われた天才科学者
先憂後楽  その2
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物で、その上、武家ではない。つまり、自由に使って良いと」
「みなまで言うな」と、苦笑を送った。


 さて、日本で鎧衣が尋問を受けている頃、マサキ達は歴訪の最後にポーランドにいた。
空港に着くなり、儀仗兵の堵列(とれつ)を受け、まるで凱旋してきた将軍の様な歓待に驚きつつ、
「BETAへの積年の恨みとは、これ程までか」と、一人呟いていた。

 若手官僚や研究者との懇談会の後、昼食会を挟んで、大統領との謁見(えっけん)となった。
駐ポーランド日本大使と通訳の同席の元、謁見の際に、ずけずけとマサキは、
「俺は、ソ連のESP兵士計画をソ連科学アカデミー会員から聞いた」と、周囲を慌てさせ、
「奴等は、新型の阿芙蓉を作っている」と驚くようなことを口走った。
同席したポーランド情報部の長官は、色を失いながら、
「セルブスキー司法精神医学研究所で、指向性蛋白が完成した話は、本当だったのですか」
と驚きの表情を浮かべ、マサキに問い質す。
喜色をたぎらせて、一頻り笑った後、
「仔細は綾峰の方から話すとして、証拠だが、俺の方で、録音テープと映像がある」
と応じて、椅子に踏ん反り返った。
後ろに居た綾峰は、大統領に最敬礼をした後、
「実は来たる国連の年次総会で、我が帝国は東欧三国と図って、ソ連の人権侵害を告発する心算です。
東欧の雄である貴国の協力が必要なため、どうかご助力の方を」
と言い終わらぬ内に、日本大使も、
「帝国政府といたしましては、貴国のEC早期加盟を英仏に外交ルートを通じ、要請する所存です」
「ふうむ」と、大統領が溜息をついた後、重ねて、
「とすると、東欧州社会主義同盟の構想も、ご存じですかな」
大統領の言葉に訝しんだマサキは、男をねめつけながら、
「東欧州社会主義同盟とはなんだよ。詳しく話せ」と言いやるも、
「これ、木原君。先方を困らせるでない」と、大使が諭した。
大統領は、その様を見て、一頻り笑った後、
「木原博士が、ご存じないのも無理はありません。
先頃、シュトラハヴィッツ少将が提案した、将来の欧州統合に向けた地域協力機構の設立構想です。
今の、ポーランド、チェコスロバキア、ハンガリーは、かつてヤゲロ朝の元で同じ国でした。
ソ連に盗み出されたバルト三国やドイツの一部も同じです。
伝統・文化的に近縁であることを持って、友好協力関係を進めることを、少将が発議されたのです」

『シュトラハヴィッツは、そんな大人物なのか』という顔をしたマサキは、
「奴はプラハの春で、ソ連の威を借りて、戦車隊でチェコスロバキアに乗り込んだ張本人だぞ。
そんな姦族(かんぞく)をチェコ人は簡単に赦せるのか」
と、心にある不安を表明すると、情報部長官が、
「博士もご存知でしょうが、BETAがいなくなってもソ連は健在で
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