第十四話 泣く女その七
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「少し行って来るよ」
「今日にですね」
「彼等の出る場所はわかっているかな」
「はい、既に」
わかっていると答えてそのうえでだった。神父は十字にファイルを出してきた。
そのファイルを受け取ってからだ。十字は神父に答えた。
「では今すぐ読ませてもらうよ」
「今夜にでもですね」
「そう。そしてその仕事を終わらせて」
そしてそのうえでだというのだ。
「あらためてね」
「救いの代行を為されるのですね」
「裁きと救いは同じものだからこそ」
神の摂理ではだ。その二つは同じだというのだ。
「そうするよ」
「畏まりました。それでは」
「うん。それにしても」
ここでだ。十字はこう言った。
「最後の闇金の者達もね」
「悪辣ですね」
「滅ぼすべき悪だね」
神がそうする、それに相応しい者達だというのだ。
「だから彼等は滅ぼされる」
「神によって」
「神は全てを御覧になられているからね」
こう言ってだった。十字は早速姿を消した。まるで霧が消える様に。
彼は神戸の繁華街、福原にいた。そこでだ。
痩せて鋭い、剣呑な目をしたオールバックの男の前にいた。スーツは無気味な灰色だ。その男を前にしてだ。十字は彼に対して言った。
「上田俊太郎だね」
「手前何だ?俺を呼び捨てにするのかよ」
「これから地獄に落ちる悪党に敬意を払う気はないからね」
「地獄!?何言ってんだ」
その細く剣呑な光を放つ濁った目でだ。痩せた顔の男は十字に言い返した。
「どうやらガキみたいだが何だってんだよ」
「君は所謂闇金だね。藤会の系列の」
「何でそれを知ってるんだ」
「神は全てを御覧になられているよ」
このこともだ。十字は男に言った。
「そう、君の全てを」
「手前。まさか」
「藤会の主立った人間はあらかた裁きを下されたけれど」
十字は男がすごんでいても全く動じていない。まるで石像の様に。
その彼がだ。さらに言うのだった。
「君達がまだいるね。そして君は」
「俺が何だってんだ」
「闇金で悪辣に儲けしかもそれにより多くの人達を苦しめた」
「金は借りる方が悪いんだよ」
「金の貸し借りはともかくその額や取立ての方法が問題だね。人身売買や臓器売買、君は他にも麻薬の売買も行っていたね」
藤会のことを全て知っているうえでの言葉だった。
「君の悪は全て知っているよ。そしてその裁きは」
「さっきから何訳のわからないことを言ってやがるんだ」
「今から行うよ。君は僕が地獄に送る」
「つまり俺を殺すってのかよ」
「じゃあ」
こう言ってだ。十字は風の様にすっと前に出た。そして。
男が動く、ナイフを出そう
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