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展覧会の絵
第十四話 泣く女その五
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女に言った。
「ほら見なさい。観客だよ」
「観客?」
「彼だよ。ずっと君のことを見ていたんだよ」
 こう言ってだ。彼の方を見る様にその顔をしゃくって指し示して言ってみせた。それを受けてだ。
 雅はその彼の顔を見た。そしてその瞬間に。
 その白く濁った中で我に返った。そうして蒼白になり落とされた鏡の様に割れた顔になりそのうでだ。がたがたと震えだした。
「猛、どうして」
「ずっと君を見ていたんだよ」
「そんな、それじゃあ・・・・・・」
「そう。君の言葉も聞いていたよ」
 由人に抱かれ四人に責められながら言っていたその言葉も全てだというのだ。
「何もかもね」
「ああ・・・・・・そんな・・・・・・」
「ほら、彼の顔をよく見給え」
 目を動かせなかった。その猛の顔は。
 血の涙を流しながら雅を見据えてそのうえで。彼女を責めるものになっていた。
 その彼の顔を見て余計にだった。雅の心は崩壊に向かった。
 雅は猛の顔、そして血の涙を見てそうしてだった。遂にだ。
 ベッドの中に倒れ込んだ。そのまま動けなくなった。心が壊れてしまったのだ。
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