第126話『転入生』
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詰めてくる。
そして彼女は、囁くように言った。
「ボクのこと好き?」
「も、もちろん!」
「じゃあ、ボクの目を見てはっきり言って欲しいな」
晴登が照れて、少し目を背けながら答えたのを彼女は見逃さない。制約がより厳しくなってから、再度愛の告白を要求される。
相槌ではなく、きちんと言葉で伝える。簡単なようで、そのハードルは高い。ただでさえその言葉を口にしないのだから、いざ言う場面でも口がうまく回ってくれないのだ。
それでもここで逃げるのはさすがにダサいと思って、一呼吸入れてから、
「す、好きだよ、結月」
「……うん、ボクも好きだよ、ハルト」
その言葉が耳元で囁かれながら、彼女の腕が優しく晴登を抱きしめる。彼女の感触を、体温を身体全体で感じ、心臓の拍動は激しさを増した。
「どう? 今日は一緒にお風呂入っちゃおうか」
「え!? それはさすがに急展開すぎ──」
「それはダメー!!」
流れで提案された悪魔のような誘いに怖気付いたところで、部屋のドアがバンと音を立てて開かれ、高くて大きい声が場を席巻した。
「智乃!? 何で!?」
「私がこの家にいる限り、節度を守ってもらうんだから! そう、節度を!」
指をビシッと指し、我が家のハレンチ警察が仁王立ちで参上した。相変わらずタイミングが良すぎる。
「むぅ〜チノったらまたいいところで……」
「結月お姉ちゃんとお兄ちゃんのお付き合いは認めるけど、あくまで健全なお付き合い。不埒な真似は私が許さないよ!」
「何で?」
「何で?! え、えっと、それは……ダメなものはダメ!」
さすがに2度目の邪魔とあって、結月もそう簡単に折れない。
智乃の言葉を追及すると、理由に困った智乃はまたも大きな音を立ててドアを閉め、出て行ってしまう。
「ありゃ、行っちゃった」
「騒がしい奴だな。というか、どっから話聞いてたんだろ……」
怪しい展開になるといつもどこからともなく現れてくる智乃だが、今日に限っては恥ずかしい会話を聞かれてしまったかもしれない。妹にそんな会話聞かれたくなかった。
「ま、ハルトから愛の告白もしてもらったし、ボクはもう満足かな」
「なら良かったよ。そういえば、結月は何で拗ねてたんだ?」
すっかり機嫌も治り、いつも通りの明るい笑顔を見せる結月。その様子を見て気が緩んでしまい、つい思ったことを口にしてしまった。
その瞬間、結月の眉がピクリと動く。同時に、空気の流れが変わったのを感じた。
「……理由、わかってないの?」
「う、うん」
さっきとは打って変わって、声のトーンが少し低い。間違いなく、言っては
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