第126話『転入生』
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水を汲み、そう言いながらマジックショーを開始した。
マジックと言えばカードとかコインが一般的だと思うのだが、彼女はこの水の入ったバケツを用いるようだ。一体どんなマジックなのかとワクワクしてきた。
「それではこちらを振り回してみますと……」
天野はバケツを右手に持つと、勢いをつけて振り回し始めた。女子の割に意外と力持ちな所も莉奈に似て……怒られそうだから言わないでおこう。
「なんと! 水がこぼれません!」
「おぉ〜!」
「おいおい、それは遠心力が働いてるからだろ。マジックっていうにはレベルが低くないか?」
「ちょっと伸太郎……」
天野がバケツを振り回しても、中の水が飛び出して来ることはない。晴登だってその現象も理屈も知っている。だが、まるで本物のマジックショーを見ているかのような気持ちになって、つい声を上げてしまったのだ。
しかし、そんな空気に飲まれることのない伸太郎からは無慈悲にも鋭い指摘が飛ぶ。
「いえいえ、全くその通りでございます。しからば、これではどうでしょう!」
だが、その反応は予定通りと言わんばかりに、天野はマジックを続ける。
これ以上何があるのかと注視していると、次の瞬間、彼女は回していたバケツが自身の真上に来た時にその動きをピタッと止めてしまった。これでは遠心力が働かなくなり、水が彼女に降り注いでしまう。これから訪れるであろう悲惨な光景を予期して、思わず晴登は目を逸らした、が。
「このように、逆さまにして止めても水はこぼれません!」
「何、だと……!?」
彼女の言葉通り、なんとバケツがひっくり返されているにも拘わらず、一滴たりとも水が溢れてくる気配はない。あのバケツには何も入ってないのではないかと錯覚してしまうほど、その状況は驚愕的だった。これにはさすがに伸太郎も驚きを隠せない。
「そんなバカな! 一体どんな仕掛けが……」
「おっと、それ以上近づかないでくださいね。マジシャンたるもの、そう易々と種明かしは致しません」
「ぐ……」
どんなタネが潜んでいるのかと追及したい気持ちもあるが、マジシャン本人に拒否されてしまえばそれは叶わない。
その後、天野は「よっ」とバケツを床に下ろす。その中身には確かに水が入ったままだ。決して無くなった訳ではない。
「どうです? これでうちの実力は認めてもらえましたか?」
「う、うん」
はっきり言って、最初は実力を疑っていた。しかし、このマジックを見せられてしまえばぐうの音も出ない。彼女は『本物』だ。
「それじゃあ認めてもらったところで、あなたたちのマジックも見せてもらってもいいですか?」
「「え?」」
度肝を抜かれて困惑
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