第十四話 泣く女その二
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その囁きを聞いてだ。望は。
まずは顔を強張らせた。俯いたままで。
「俺、けれど」
「嫌なの?」
「俺そうした経験ないから」
顔を正面で俯けさせたままでの言葉だった。
「それに」
「それに?」
「だから。経験ないから何をしていいのかわからないから」
「大丈夫よ。それならね」
「それなら?」
「私が知ってるから」
いいと言ってからだ。そのうえでさらに言ってきた言葉だった。
「心配しなくていいわ」
「じゃあ」
「あんな娘のことは忘れて」
望に言っている言葉ではなかった。春香への言葉だった。
「それでね」
「して。いいんだよな」
「いいわ。今ここでね」
この言葉にだ。顔を鏡、今まさに割れんとするそれの様に強張らせたまま観ている春香に言ったのだ。望に対して言った言葉ではなかった。
「しましょう。どうかしら」
「本当にいいんだよな」
「遠慮することないから」
心の余裕をなくしている望を誘惑し、観ている春香に聞かせていた。
「さあ、しましょう」
「じゃあ」
ここでようやくだ。望は。
ようやく顔をあげた。そしてだ。
少女の顔を見てだ。こう言ったのだった。
「今から」
「そう。私全部知ってるから」
「していいんだよね」
「ある程度知識はあるわよね」
「一応な」
それは知っているとだ。望は答えた。
「だからやり方とかは」
「はじめてでもよね」
「ああ。じゃあ」
「来て」
こう言ったのである。
「今からね」
「じゃあ」
こうしてだ。望の方からだった。
少女に向かい勢いよく抱き締める。それからだ。
少女を今二人が座っているベッドの上に押し倒しその服を脱がせる。そうしてだ。
勢いのまま少女を抱く。少女もそれに合わせて乱れる。その中でだ。
望は少女の上から下から、そして後ろから。激しく交わりながら叫んでいた。
「あんな奴、もう知るか。二度と会うものか!」
「そうよ。忘れたらいいから」
その望と交わりつつだ。少女も彼に応える。
「だからね。今はね」
「ああ、こうしてやる」
少女と交わるというのだ。
「そしてもうあんな奴!」
「忘れたらいいから」
「そうしてやる!」
言いながらだ。望は激しく動くのだった。その彼を観てだ。
春香は慟哭していた。画面から目を離せない。自分のことを否定する言葉を叫び他の女と交わる彼を見て。春香はテレビの前でそうなっていた。
「ああっ、ああ・・・・・・。ああーーーーーーーーっ!!」
その両目から涙がとめどなく溢れ出る。そしてそれと止めることができず。
春香はただひたすら泣いていた
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