第十四話 泣く女その一
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第十四話 泣く女
話は前後する。雪子が言ったあの日から数日後のことだ。春香が学校から家に戻るとだ。家には誰もいなかった。母はパートに出ていた。父は当然仕事に出ている。家の中にいるのは彼女と犬だけだった。
玄関にいる犬に挨拶をして郵便物を見るとだ。そこには。
DVDが入っていた。春香はそれを見てまずは目をしばたかせた。
「あれっ、私何も買っていないけれど」
通販ではだ。そうした記憶はなかった。
それで首を捻った。だがそれでもだった。
そのDVDを手に取ってそうしてだ。それを手にしてだ。
家の鍵を開けて中に入る。それからだ。
DVDを観はじめる。そこにはだった。
彼が移っていた。それは。
望だった。彼は怒った顔でだ。共にいる少女に言っていた。
「あんなことする奴だとは思ってなかった」
「ショック受けたのね」
少女の顔は見えない。私服はラフな黄色い上着にデニムのミニだ。しかし顔には妙なぼかしが入っていて見えない。顔が見えるのは望だけだった。
その彼がだ。虚ろな声でこう言っていたのだ。
場所は春香もよく知っている場所だった。望の部屋だった。彼はそのベッドの上に座りそのうえでだ。隣に座る少女に話していたのだ。
「そうなのね」
「ああ、何なんだよ」
「まさかね。幼馴染みがね」
「あんなことしてたなんてな」
「えっ・・・・・・」
望の俯いた忌々しげな言葉にだ。春香は蒼白になった。
そのうえで望の言葉を聞く。聞かずにはいられなかった。
「まさか。あのことを」
「俺のこと好きだって言ってたさ」
「ああ・・・・・・」
ここで確信した。望は知ったということを。
「そんな、そんな・・・・・・」
「けれどな。言いながらな」
「ベッドの上でだったのね」
「自分から身体を動かして。それで」
「それは酷い話よね」
「あんな奴だったなんてな」
また忌々しげにだ。望は言った。
「ったくよ。何でなんだな」
「元々そういう娘だったのよ」
少女は優しい声で望に寄り添って告げる。
「そうだったのよ」
「だったんだな」
「ええ、そうだったのよ」
少女の声は微妙に何かの変更が加えられていた。何処か音声変更があった。だから声だけでもわからなかった。
「だからね。あんな娘のことは忘れた方がいいわ」
「けれどな。あいつな」
望は俯いたまま戸惑いを見せた。相手のその言葉には。
「俺を。好きだって言ったからな」
「けれど好きって言いながらよね」
善意の仮面を被ってだ。相手の少女は言った。
「あの娘他の誰かと」
「誰かはわからないけれどな」
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