第三章
[8]前話
「私は間違えていた、王と言えど教えを請うのならな」
「学ぶ者の場にいるべきですね」
「そうでなくて学べるか」
「はい、それでは」
「これからは学ぶ時は下の座につく」
「そうされて下さい」
「しかしそなたマンゴーを盗みに来たというが」
王様はここでご主人に尋ねました。
「一体誰だ」
「この街のしがない果物売りです」
「そうなのか」
「そしてマンゴーを盗みに来た盗人、どうかお裁きを」
「だがそれも子を授かりそれ故にマンゴーを食べたくなった奥方にどうしても頼まれてのこと」
王様はご主人がお話したことをご自身も言いました。
「出て来た状況それにそなたの目と口調を見ればわかる」
「嘘を吐いていないと」
「そうだ、それにそなたは罪を認め盗んだマンゴーの実を全て差し出した」
「服に隠しているものはありませぬ」
司祭さんも見て言います。
「全く」
「そうだな、こうした者は罪に問うべきではないな」
「私もそう思います」
司祭さんは王様に答えました。
「その様に」
「ではな、ここはだ」
「はい、この果物売りはですね」
「咎めぬ、むしろだ」
王様はさらに言いました。
「その聡明さと心の確かさは街を治めるのに役立つ」
「では」
「そなた王宮に入るのだ」
王様はご主人にあらためて言いました。
「罪は問わぬからな」
「何と、罪にですか」
「そうだ、問わぬ」
絶対にと言うのでした。
「だからこれからは王宮でな」
「そこにおいてですか」
「私が過ちを犯せば諫めてくれるか」
「マンゴーを盗んだ私が」
「それがどうしてかはもう聞いた」
笑っての返事でした。
「そして許したな、だが咎を受けることを恐れずその罪を認め私に過ちを教えてくれた」
「だからですか」
「そなたにはこれよりな」
是非にというのです。
「王宮に入ってもらい働いてもらう」
「王様を諫めて」
「そうしてもらう」
こう言ってでした。
王様はご主人に自分の首飾りを外してその首にかけてあげたうえで司祭さんと共に王宮に迎え入れました。
王宮に迎えられたご主人はすぐに奥さんを呼びました、お話を聞いた奥さんは王様に平誤りしましたが勿論王様は笑顔で奥さんも許しました。
ご主人は王様を諫める大臣として奥さんは王妃様お付きの女官となって働きやがて二人の間には立派な男の子が生まれて三人末永く幸せに過ごしました。インドに伝わる古いお話です。
マンゴー盗み 完
2022・8・14
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