第一章
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マンゴー盗み
インドの古いお話です。
ヴァーラナシーという街に若い果物売りの夫婦がいました、この時奥さんは妊娠していて酸っぱいものが食べたくて仕方ありませんでした。
それで奥さんはご主人にこんなことを言いました。
「マンゴーが食べたいの」
「甘くて何より酸っぱいからかい」
「そうなの、私甘いものも好きだけれど」
「今は妊娠しているから」
「だからね」
その為にというのです。
「酸っぱいものも食べたくて」
「マンゴーが食べたいのかい」
「そうなの」
「しかしだ」
それでもとです、ご主人は奥さんに言いました。
「今の季節は」
「マンゴーはないわね」
「あるとしたら」
奥さんにこう言いました。
「この街の王宮のだ」
「あそこのなの」
「お庭にマンゴーの大きな木があるという」
「そうなの」
「そしてその木は一年中実が実るという」
マンゴーのそれがというのです。
「それを頂こうか」
「王宮に入って」
「そうだ、盗みになるが」
それでもというのです。
「頂こうか」
「そうしてくれるの」
「捕まったら大変なことになるが」
それでもと言うのでした。
「お前がそう言うのならな」
「取って来てくれて」
「食べさせてやるな」
「そこまでしなくても」
「お前が言うからな」
愛する奥さんがというのです。
「そうしてくるな」
「けれど」
「いい、食べたいというのなら取って来る」
こう言ってでした。
そのうえで、です。その夜にです。
ご主人は家で飼っているお猿を連れてでした。
そのうえで王宮に忍び込んで、です。そこのお庭に入ってマンゴーの木に登りましたがここで、でした。
実を夢中でもぎましたがお猿が言ってきました。
「ご主人大変です」
「どうしたんだい?」
「今日は随分日が速いです」
「なっ、もう明るくなって来たぞ」
「そうなりました、そして」
お猿は下を見て言いました。
「下に誰か来ました」
「えっ、朝日と共にかい」
「そうです」
「確かに」
ご主人も下を見ました、するとです。
実際に誰か来ました、まだ夜の闇が消えようとしている時なのにです。
マンゴーの大きな木の下に誰か来ました、その人はといいますと。
この国の王様です、王様は王宮の司祭の人を連れてきています、ご主人も時々街に出て行列をものものしく率いているその人達のお顔は知っていました。
それで、です。ご主人はお猿に眉を顰めさせて言いました。
「こうなっては仕方ない」
「今はですね」
「ここにいるしかない」
マンゴーの木にというのです。
「幸い木の葉で私達の身体は隠れているし」
「ここに隠れてですね」
「そしてだ」
「
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