第一章
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マンゴーの恵み
釈尊はゴーダマシッダルダに転生するまではボーディサッタという者だった、ボーディサッタはこの時猿に姿を変えていた。
そのうえでヒマラヤの森を治めていたがそこにはマンゴーの木が非常に多く彼もその中の一際大きなマンゴーの木に住んでいたがこの木は花も葉も奇麗でありかつ実は非常に大きく味もよかった。その木の中でだ。
他のマンゴーの木魏が川沿いに根を深く下ろし枝が水面を横切る様になっているのを見た、それで彼は治めている猿達に言った。
「この辺りのマンゴーの木々は川沿いにありますね」
「はい、そうですね」
「そちらに生えていますね」
「それで枝は川の水面すれすれです」
「そこまで下がっていますね」
猿達もボーディサッタに答えた。
「それで身が実るとです」
「川に着いてしまいかねないですね」
「そうなりますね」
「そうなっては川に流されてしまいます」
マンゴーの実がというのだ。
「そうなります、ですから」
「ですから?」
「ですからといいますと」
「まずはそこに実っているマンゴーの実を食べるのです」
川の水面に着きかけないそちらからというのだった、
「いいですね」
「川に流される前に」
「その前にですね」
「実を食べる」
「そうすべきですね」
「そうです、腐らせては勿体無いです」
ボーディサッタは強い声で言った。
「だからです、いいですね」
「わかりました」
「その前に食べます」
「そうします」
「その様にするのです」
こう猿達に言ってでした。
ボーディサッタは他の食べものより先にそちらのマンゴーの実達を食べさせた、そうしてであった。
食べものを無駄にしない様にした、だが。
まだ熟していない実を一つ置いていたが。
「あの実が熟れてですか」
「はい、川に落ちてです」
「そうして流されました」
「そうなりました」
「そうですか、勿体ないですが仕方ないですね」
川に流されてはとだ、ボーディサッタは応えた。
「そうなっては」
「ではですね」
「その実は諦めますね」
「そうしますね」
「そうするしかないですし」
それでとだ、ボーディサッタは猿達に答えた。
そうして他の実を食べていたがやがて川下の人間の国でだ。
川で水浴びをしていたその国の王が流れてきたそのマンゴーの実を見付けた。それで周りの者達に問うた。
「何だこれは」
「はて、何でしょうか」
「はじめて見ますが」
「どうやら果物ですね」
「その様ですね」
「そうだな、しかし何とかぐわしい香りだ」
王はマンゴーの実を手に取ってその香りに心を奪われた。
「香水や髷づけ油よりもだ」
「いい香りです」
「この様ないい香りのものははじめてです」
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