第二章
[8]前話
「この子は耳に障害があるんだ」
「折れてるだけじゃないの」
「あまり聞こえないんだ」
耳がというのだ。
「全部じゃないけれど」
「そうなの」
「だから反応がよくないんだよ」
「そうなのね」
「そう、けれどね」
「ええ、私もね」
妻は自分のことから考えてから答えた。
「身体はね」
「ずっと入院していてね」
「治ったけれどね」
それでもというのだ。
「よくないし障害があっても」
「それでもだね」
「その辛さもわかる気がするし」
「実は君が入院している間家で一人でいて」
「私が退院したらね」
「猫を飼おうって話をしていたから」
それでというのだ。
「こちらに何度か来ていたけれど」
「この子と出会ったのね」
「それで何度か会ったけれど人懐っこくて大人しくてね」
「いい子なのね」
「君にも懐くと思うから」
「そうね、私も何度か会って」
妻は夫に答えた。
「決めたいわ」
「じゃあね」
「これからもね」
何度か会ってとだ、妻は夫に答えた。そして実際に夫婦でこの猫と何度か会った。そのうえでだった。
この猫を家族に迎えることにした、猫は何度か会っているうちに二人に懐いていた。それで家に入ってもだ。
すぐに二人の傍にいて仲良く暮らす様になった、だが。
名前がまだだった、それで夫婦で考えていると。
ふと猫を見ると家に飾ってあった千羽鶴の傍まで来て見上げていた、妻はその様子を見て夫に話した。
「名前つるにしましょう」
「千羽鶴を見ているからかな」
「それで私が入院している間鶴を折ってくれていて」
「それで退院したら飼おうって言っていたから」
「それでね」
そうした事情があってというのだ。
「この子の名前はね」
「つるだね」
「その名前にしましょう」
「いいね、じゃあね」
「ええ、この子の名前はつるよ」
夫に笑顔で言った、そしてだった。
猫の名前はつるになった、つるはよく千羽鶴を見ていた、そして夫婦によく懐き一緒に遊んでだった。
「つる幸せか?」
「私達と一緒で楽しい?」
「ニャア」
あまりよく聞こえないが二人の声は聞こえていた、そして彼等の笑顔と優しさに触れて。
嬉しそうに鳴いて応えた、それが何よりの返事だった。その彼と共にいる夫婦もまた幸せであった。
猫と千羽鶴 完
2022・11・28
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