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冥王来訪
第二部 1978年
狙われた天才科学者
先憂後楽  その1
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にも勲三等旭日中綬章と決まった。
 無論、表向きはマサキ達の勲章授与の返礼で、あったが。

マサキが、そんなことを考えていた時、ふと、
『この謝礼として、あとでハイヴの奥深くから持ち出した宝石でも渡そうか。
ユルゲンの周りにいる女どもに、誕生石の原石でも20キロばかり、袋に詰めてくれてやろう』
と、そう一人想い、ほくそ笑んでいた。


 夕刻、ブタペスト市内のホテルに戻った際、バルコニーから市街を眺めながら、思案に耽った。
隣国、オーストリアからかなりの数のCIAや西ドイツの間者が入っている事には気が付いていたが、知らぬふりをしていた。
 こちらが興味を持っていなくても、向こうは違うらしい。
ハンガリーの諜報機関関係者らしい人間がずっとマークしているほかに、時折鋭い眼光を見せる百姓や旅行者風の人間が目につく。
シュタージほどにあからさまではないが、ソ連に痛めつけられた国とは言え、社会主義国なのだなと、あらためて実感した。

 一人感慨にふけりながら、紫煙を燻らしていると、美久が一煎の茶を用意し、
「明日はポーランド訪問です。少し休まれたら、いかがですか」と、不安な面持ちで声を掛ける。
茶葉はリプトンのアールグレイで、唇を濡らした後、
「なあ、美久。この戦争でソ連は弱体化した。歯牙にもかけない存在になろう、ただ……」
「なにか、気掛りな事でも」と答え、マサキの方を振り向く。
マサキは、静かに茶碗を置くと、ずかずかと五歩ほど近寄り、右手で上着の上から美久の乳房を掴む。
火を噴かんばかりに顔を赤くする美久の、驚く様を楽しみながら、
「ソ連に、資金提供した国際金融資本の存在だ」と、耳元で囁く。
引き続き、喘ぐ美久の、両胸を弄びながら、
「奴等は、1920年代の資金封鎖の際も、制裁を迂回し、バクー(今日のアゼルバイジャン共和国の首都)油田の開発などをした」
と言いやり、恍惚とした彼女を抱きしめる。

マサキは、吸い殻を灰皿に投げ入れると、
「怖いのはテロ組織や過激派ではなく、裏で金を用意する連中さ」
と、驚くようなことを口走り、くつくつと笑い声を上げ、
「俺は、元の世界で、鉄甲龍という秘密結社を作った。
その組織を作るにあたって、隠れ蓑として、或いは資金源として国際電脳という世界シェア7割の電気通信の会社を準備した」
そして、不敵の笑みを湛えながら、
「それほどまでの事をしても、俺は国際金融資本に手も足も出なかった。
故に八卦ロボを、天のゼオライマーを秘密裏に建造し、世界を冥府にする計画を立てた」
と、美久のわななく唇に濃厚なキスをし、甘い口腔に深々と舌を差し込んで、(むさぼ)り、
「頼む、美久。俺に力を貸してくれ。二人で国際金融資本へ挑戦しようではないか」
と、垂れさがる彼女の(まなじり)
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