第二部 1978年
狙われた天才科学者
先憂後楽 その1
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吶喊の件をどう思いますか」
と、向こうの参謀総長から問いかけられた。
マサキは、頬杖をつきながら、
「光線級吶喊に関しては、失うものが大きく、得るものが少ない」と率直な意見を述べた。
彼の素っ気ない答えに、
「ええ!」と、驚きの声を上げた参謀総長は、
「貴方は東独軍と行動を共にしたと聞いてますが、先のソ連軍のセバストポリ攻防戦はどうお考えですか。
あの時は、ソ連軍は戦術機隊でBETAを食い止めたではないですか」
と、問い質した。
マサキは、出し抜けに声を上げて笑うや、
「あれはソ連側の国外向け宣伝の好例だ。戦火が実情より誇張され過ぎる。
貴様等は、条約機構軍としてソ連に軍を派遣して、それ程の事も分からぬとはな」
と、満面に喜色をたぎらせ、
「まあ、良かろう。
俺自身、支那での戦闘でその辺は実感している。
セバストポリの件は、最後の決め手となったのは、黒海洋上からの火力投射だ。
端的に言えば、巡洋艦や駆逐艦から艦砲射撃と、核ミサイルの飽和攻撃が勝因となった。
BETAの梯団攻撃の遅延にしかならない。
ベルンハルトより光線級吶喊の厳しさを聞いているし、また奴が考案した光線級吶喊の問題点。
端的に言えば、実際の戦果以上に誇張されたとの証言は、カセットテープに録音してある。
詳しい話は、脇に居る綾峰に問い合わせてくれ」と、話を振った。
綾峰が熱心にハンガリー将校団に説明して居る折、マサキは一昨日の事を振り返っていた。
アイリスディーナとの見合いの際に、マサキは只では帰らなかった。
次元連結システムを応用したペンダントを渡したばかりではない。
ユルゲンを秘蔵の酒で泥酔させ、西側に詳らかになっていないソ連のBETA戦争の実情を聞き出していた。
易々と東側の実情を聞き出せたのは、妻であるベアトリクスが妊娠のつわりで不調だったのも大きい。
彼女が、健康で気を張っていた状態ならば、おそらく止められたであろう。
人の好い、初心で世間知らずなアイリスディーナには、其処まで気が回らなかったのもあった。
副官のヤウクや、お目付け役として派遣されたハイゼンベルクにも、大分聞かれたろう。
だが、構わず、マサキは、旨酒に不覚を取ったユルゲンから情報を抜いたのだ。
無論、対価として鎧衣の方から、ソ連へのアラスカ割譲に関する米国政府の秘密文書を渡した。
彼等が喉が出るほど欲しがった情報だが、既に古い情報なので、鎧衣は躊躇わずに差し出した。
つまり、マサキも、日本政府も、ただ同然で有意義な情報を手に入れたのだ。
その返礼としてではないが、ユルゲンとヤウクに勲五等双光旭日章が送られることになった。
東独議長には、勲一等旭日桐花大綬章、シュトラハヴィッツ少将
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