第二部 1978年
狙われた天才科学者
先憂後楽 その1
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をたぎさせ、
「試作段階だが、1秒間に75回の照射を浴びても、3万秒ほど持つ対光線ペンキは、出来ている。
ただ、耐候性に弱点があって、3か月ほどで劣化して、再度塗装をするしかない。
また、水分を含むと強度は増すが、重量も5パーセントから25パーセントほど増える欠点もある」
と、脇に居る美久から、資料の入ったトランクを受けとり、
「詳しい成分と化学合成式が、この中に書いてある。
特許料は、年間売り上げの0.5パーセントから1パーセントで良いから、寄越せ」
と、勝手に話を進めてしまった。
綾峰は、その様を見るなり、途端に嚇怒し、
「貴様は、俺を蔑ろにするのか。毎度毎度問題ばかり起こして」
マサキの襟首に手を掛け、制服の茶色いネクタイを掴み、
「責任を取るのは、駐在武官や大使閣下、それに俺なんだ。
議会や陸軍参謀本部に、責任の負えない、特務曹長のお前は説明できるのか」
と、青白い顔色で、血走った目を向けた。
「お前も気が短い男だな」と、マサキが呆れてみせるや、
綾峰は、ますます興奮し、顔に浮き出た青筋を太らせ、
「貴様、欧州まで遊びで来てるのか。これは仕事だ、戦争だぞ。
殿下の顔に泥を塗るつもりか」と、周囲が驚くばかりの大声を上げ、一喝した。
綾峰は、一通り、うっぷんを吐き出した後、
「なあ、木原よ。なぜ、先ず我々に相談しないんだ。
手助けするにしても、我々に最低限の連絡が欲しい。
貴様が何がしたいのか分からければ、我等も動きようがない」
珠瀬も、困り果てた綾峰を助ける様に、
「木原君、君がしたいことは分からんでもない。だが事前の話し合い無しに行動されては困る。
ましてや、今回の件は技術的な話だ。化学産業のメーカーや技術本部にも相談が欲しかった」
と言いやると、幾分白髪の混じった頭を掻きむしり、
「で、綾峰大尉殿、どうしますか」と、問いかける。
「今の話はオフレコにしてもらって、俺がこの場を収める。
あと、チェコに居る商社マンを呼んで、都の化学メーカーでも頼るしか有るまい。
実現可能か、どうかは、ともかく、一度外に出てしまった話だ」
と、あきらめの言葉を吐いた。
その様を見たマサキは、暫し考え込んだ表情をした後、
「俺の方も少し、はしゃぎ過ぎた」と申し訳なさそうに呟いた。
無論、この男の事である。本心からの謝罪ではない。
頭の中には、グレートゼオライマー建造計画の事でいっぱいだった。
グレートゼオライマーを手早く完成させるには、日本企業の力添えも必要。
故に、形ばかりの謝罪をしたのだ。
翌日、ハンガリーのブタペストの参謀本部に招かれ、青年将校団との討議がなされた。
質疑応答の殆どを、綾峰に任せ、椅子の背もたれに寄り掛かっていると、
「木原さん、光線級
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