第五百二十八話 ヒッティーンの血と汗その七
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「まさにな」
「そうであればいいのですが」
「反面教師もいて」
春生はこうも言った。
「お手本もいる、いいことだ」
「そしてその反面教師はな」
ディルクは無表情で仙人を見て語った。
「あのおっさんだな」
「その通り」
「またここでわしか」
仙人は抗議で応えた。
「わしが何をしたというのだ」
「何もしてないから言うんだ」
ディルクの返事は容赦のないものだった。
「食って寝ていびきかいてるだけだからな」
「おのれ、動いたら迷惑だと言って」
「こんな役に立たねえ人もいねえ」
ディルクはこうも言った。
「本当に動いたらひでえことになるしな」
「お話を聞きますと」
じゅりも言うことだった。
「あんまりにもなので」
「おっさん、あんたそれでいいのか」
ディルクはこうまで言った。
「正直天空寺さん達のこともあんたがかなりなんだよ」
「というか殆どでは?」
ざくろが見てもだった。
「聞く限りですと」
「そうだな」
ディルクはこのことも否定しなかった。
「勝手に住職にもなってるしな」
「色々酷いですね」
「本当にな」
「ええ、そこまで言うなら寝てやる」
仙人は水をごくごく飲んでから寝袋に入った。
「夜だし冷えるからな」
「砂漠だから冷えるな」
「そうなの」
あろまとみかんもそれは知っていた。
「どうしてもなの」
「だから暖かくして寝るである」
「そうしてやる、どうせ役立たずだからな」
「そんな態度だから駄目だな」
「そうなの」
「おっさんせめて何がするルル」
ガァルルも言ってきた。
「さもないとそのままである」
「ふん、働いたら負けだ」
仙人はこうまで言った。
「こうなったら意地でも動かんぞ」
「豚野郎より豚野郎ですわね」
さしもの美晴も呆れた。
「その台詞まで出すとは」
「実際この人お寺でもこうだからね」
「働かないからね」
「住職さんのお仕事全くしなくて」
「お掃除も修行もね」
「お経も読まないし」
「いつも飲んで食べてばかりだからね」
シブヤとナリタも言うことだった。
「それか寝る」
「冗談抜きで全く働かないね」
「あの、じゃあ住職さんのお仕事は」
美晴はその話を聞いて察した。
「やはり」
「御成さんがいるから」
「ジャベルさんもね」
「それにタケルもいるし」
「タケルが将来お寺継ぐしね」
「やはりそうですね、この方は」
美晴はあらためてわかった。
「見事に」
「そうなんだよね」
「まあこうした人ってことでね」
「これまでもだったけれど」
「これからも宜しくね」
「よくわかりましたわ」
「とりあえず数に入れないでいきましょう」
ベアトリスは野菜を切りつつ言った。
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