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こいつだけ戦死していたら
第一章

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                こいつだけ戦死していたら
 藤村安武は大のアンチ巨人で阪神ファンである、妻の七瀬も二人の間の息子の実もそうであり一家で正しく巨人を嫌っている。
 だがある日だ、実は父にこんなことを言った。
「お父さん、昔巨人の星って漫画があったんだ」
「読むなよ」
 父は息子に即座にこう返した、眉は太く鉤爪の様な形をしていて切れ長のきりっとした目をしている。長方形の顔で口は引き締まり癖のある黒髪を真ん中で分けている。背は一七五位で痩せている。八条電子の社員である。
「巨人が主人公の漫画だからな」
「あんな漫画は大人になってから読むものよ」
 七瀬は夫そっくりの顔と髪型の息子に言った、中学一年の息子は本当に夫に瓜二つだ。七瀬は茶色の髪の毛をショートにしていてやや丸顔ではっきりとした目と唇それに大きな耳を持っている。一六二程の抜群のスタイルを持つ身体で声は所謂ダミ声であるがそれがまた特徴的だ。
「まだ早いわよ」
「悪いことをはっきりとわかってから読めよ」
 父は息子にこうも言った。
「巨人がどう悪いかな」
「それからにしなさい」
「うん、それじゃあ」
 息子も頷いた、そしてだった。
 中学の時は読まなかった、そしてだった。
 高校になってからだ、彼は両親にあらためて話した。
「中学の時巨人の星の話したけれど」
「ああ、もうことの善悪がわかったか」
「一応。巨人がどうして悪いかも」
 このこともというのだ。
「わかったよ」
「なら読んでみるんだ」
「そうしたら巨人が主人公の漫画を読んでも」
「ああ、洗脳されてな」
 そうなってというのだ。
「巨人を好きにならないからな」
「巨人を好きになったら駄目だし」
「あんな悪い存在ないからな」
 巨人程というのだ。
「だから間違ってもだ」
「巨人ファンになったらいけないし」
「ああ、人間としての倫理観がはっきりするまではな」
「巨人の星とか巨人が主人公の漫画は読まない」
「子供なんかに読ませたら駄目なんだよ」
 強い声でだ、父は息子に話した。
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