第一章
[2]次話
太らない人
菅生敦子はごく普通のOLである、臍の辺りまで伸ばした黒髪をストレートにしていて大きな丸い目と小さな唇に一五八程の均整の取れたスタイルである。八条自動車の総務部でもごく普通の存在である。
だが彼女には一つの自慢があってだった。
「私太らない体質でね」
「それでなの」
「幾ら食べても太らないの」
「そうなの」
「元々そうだけど」
同期の面々に昼食でハンバーガーを何個も食べつつ話す。
「最近特にね」
「幾ら食べても太らないの」
「そうなの」
「その体型なの」
「そうなのよ、有り難いわ」
笑顔での言葉だった。
「本当にね」
「それはいいわね」
「確かにね」
「幾ら食べても太らないって」
「その体質はいいことね」
「このことは自慢よ」
言いつつハンバーガーをさらに食べる、兎角だった。
彼女は幾ら食べても太らなかった、どれだけ太るものをそうしてもだ。
それで自分のこの体質を嬉しく思って感謝をしていたが。
ある日その話を聞いた後輩の男性社員山本幸次きりっとした面長の顔で長身に黒髪を短くした彼は深刻な顔で言った。
「すぐに病院行くべきですよ」
「えっ、何でなの?」
「幾ら食べても太らないっておかしいですから」
敦子に真顔で言うのだった。
「ですから」
「病院になの」
「はい、行かれて」
そうしてというのだ。
「診てもらうべきです」
「病気とか?」
「はい、そうした方がいいです」
「去年健康診断受けたけれど」
会社のだ。
「何処も問題なかったわよ」
「それでもですよ」
山本の顔は真剣なままだった。
「そうして下さい」
「健康診断じゃわからないこともあるの」
「特にそうなったのって何時からですか?」
「九か月前?健康診断の結果出た直後よ」
「その時何かあったとか」
「ええと、実家の大分帰っただけよ」
田舎である、実家に田畑もある。
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