第一章
[2]次話
お見合いの場で部下と
八条製鉄事務課で勤務している榊原美桜は父からお見合いの話を言われた、もう二十八歳で年齢的にも結婚のことを考えていたのでそれならと頷いた。
赤茶色の髪の毛をロングにし奇麗にセットしている。大きな垂れ目で艶やかな感じの唇ですっきりした頬と奇麗な顎を持っている。背は一六六程でスリーサイズはかなりのもので脚もかなり整っている。
その彼女が相手の見合い写真を観るとだった。
黒髪をショートにしていて形のいい黒い眉に少し気弱そうな目に大きな口と卵型の顔ですらりとした長身でスーツを着ている。その写真を観てだった。
美桜は兄と共にスーパー銭湯を経営している父にだ、真剣な顔で尋ねた。
「この人の名前何ていうの?」
「金剛悠一さんだ、二十五歳だ」
「出身大学八条大学かしら」
「教育学部出身だそうだな」
「この人私の直属の部下だけれど」
こう父に言った。
「いつも一緒にいて」
「何っ、そうなのか」
「そうよ、まさかお見合い相手がね」
美桜はこれはないという顔で述べた。
「思わなかったわ」
「俺もだ、同じ職場だとは思ったが」
「そうよね、まさかお見合い相手が部下なんて」
「じゃあ止めるか」
「いや、これお父さんがお世話になってる人からのお話よね」
「ああ、そうだ」
「だったらね」
それならと言うのだった。
「お見合いするだけでもね」
「するか」
「ええ、さもないとお父さんにも都合が悪いし」
世話になっている人からの話だからだというのだ。
「それじゃあね」
「会うだけ会うか」
「そうするわ」
こう父に答えた、そうしてだった。
美桜は自分のお見合いの写真で着た着物を着てお見合い場所の八条ホテル本館に行った、そうしてだった。
そこで相手の金剛に会うことにしたが。
相手も自分のことを知っていると思っていたので来ないかもと考えていた、だが彼もまた来てだった。
そのうえでお見合いとなり二人だけになってホテルの庭を散策しつつ話すことになったが。
美桜は自分の隣を歩く自分より十センチは高い彼に言った。
「あのね、まさかね」
「主任のお写真観て驚きました」
「私もよ、まさかよ」
「主任とお見合いするなんて」
「部下の君とね」
「断わられると思ってました」
金剛は正直に述べた。
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