敢闘編
第六十一話 戦いの合間に
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部長の内命らしいじゃないか…面白そうだ、って飛びついたよ。だから呼んでもらって光栄ってのは本当なのさ」
「そうだったんですね」
「少尉ももうマフィアの一員だぞ。俺達より先に来ていたんだから、古参メンバーって事になるな」
ワイドボーン中佐は笑ってそう言った。中佐の事は私も少しは知っている、士官学校首席で十年来の天才、と騒がれたそうだ。その天才ワイドボーンをシミュレーションで打ち破ったのが当時落第寸前のヤン大佐…近年の士官学校出身者なら皆知っている話だ。
「だけど、俺達だけなのか?」
「いえ、閣下の同期のバルクマン中佐、ダグラス中佐が来られます。あと後任人事が決まり次第こちらに配属になるのがヤン大佐、カヴァッリ中佐、ラップ少佐ですね」
「へえ、ヤンとラップも来るのか。士官学校以来だな」
中佐が懐かしそうな顔をする。
「お二人とは親しくされていたのですか?」
「…いや。親しくはなかったな。最初は専攻も違ったから、親しくなるような機会がなかった。そして奴が戦研科に転科してきた。そこから先は君も聞いた事があるだろう?俺も目を疑った、なんで奴なんかに負けたのか…当時は訳が分からなかった…」
当時の事が懐かしいのだろう、ワイドボーン中佐は空になったグラスに赤ワインを注ぎながら笑っている。
「…シミュレーションでの奴の任務は補給線の維持だった。当初は遭遇戦から始まった。奴は俺の艦隊にある程度の損害を与えると、後退を始めた。俺は損害を受けたとはいえ軽微な物だったし、まだ逆転は可能だと思った。奴の能力なら追い縋る俺を殲滅する事も出来ただろう、だがあいつは後退を止めなかった。シミュレーションが終了してみると、判定は俺の負けだった」
「…当時は、と仰いましたが…」
中佐がワインボトルを手にする。慌ててグラスを空けた。
「ああ。今なら分かる。奴はシミュレーションの外の宙域を見ていたのだろうと思う。敵の補給線を遮断するとなれば、敵の内懐に入らねばならない。撤退する守備艦隊を追えばますます奥深くに侵入する事になる。あいつは自分だけではなく、味方の包囲網に俺を引きずり込んで撃破する想定を考えていたのだろう。たとえ自分だけで俺を撃破出来たとしても、損害が大きければその後の任務続行は難しいからな。遭遇戦という形で始まっているから、敵戦力は俺の艦隊だけではないかも知れない、一時的に後退したとしても、味方総出で当たれば楽に撃破できるしその後の任務続行も可能だ…多分そういう状況になったら、という想定でもしていたのだろうと思うよ」
「ですが、それはそのシミュレーションの設定を超えているのでは…」
「そう。だから当時は分からなかったのさ、現実の戦場に出た事はなかったからね。マシンの判定でも俺は負けだったし、教官達も同様だった。マシンは純粋な被害判定だけど、教官は実際
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