第二章
[8]前話
「急に雨が降ってもね」
「傘をさせるし」
「しかも杖代わりにもなるんだよ」
「だから好きなのね」
「あんたにもいつも持たせてるね」
右京に顔を向けて微笑んで話した。
「傘を」
「折り畳みのね」
「いざって時にだよ」
雨が急に降ってきてもというのだ。
「助かるし」
「いつも持っていていいのね」
「傘はね、そのこともあってだよ」
「祖母ちゃん傘集めてるのね」
「そうだよ」
買ったばかりの傘、スカーレッドのそれをにこにことして丹念に手入れをしながら話した。そうしてだった。
祖母は傘を集め続けたがある日だ。
右京は学校の帰り道急に雨に降られてだった。
咄嗟に祖母が持たせてくれていた折り畳み式の傘を鞄から出してだった。
それをさして難を逃れて濡れずに家に帰ることが出来た、そしてだった。
店に入る時に注文を受けてモダン焼きを焼いている祖母に言った。
「雨が降ってきたけれど」
「傘を持っていたからだね」
「助かったわ」
「そうだろ、傘はね」
「本当に役に立つのね」
「祖母ちゃんもわかってるんだよ」
自分でもというのだ。
「自分の趣味が変わってるってね」
「傘を集めることは」
「そうだよ、けれどね」
「持っていてもね」
「困るものじゃないだろ」
「ええ、お陰で助かったわ」
今回はとだ、右京は店の仕事をしつつ応えた。
「そうなったわ」
「だからだよ」
「傘を集めていても」
「悪いことじゃないだろ」
「そうね、変わっていてもね」
祖母自身が言う通りそうした趣味でもというのだ。
「傘は有り難いものだから」
「集めてもいいんだよ、祖母ちゃんはそう思ってるよ」
「そうなのね」
「だから続けるよ、これからも」
「わかったわ、助かるものを持つことはね」
それを集めることはというのだ。
「いいことね」
「趣味にしてもね」
「そうよね、今日は本当に助かったし」
「そのことがわかったねあんたも」
「そうなったわ」
笑顔で話してそうしてだった。
右京は仕事をしていった、彼女は傘を持つ趣味は持たなかったが有り難いものであることはわかった。それでいつも鞄の中に折り畳み式の傘を入れていった。
傘を集めることが趣味で 完
2022・11・21
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