東方project 秋姉妹 〜人恋し神様〜
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戻らないと・・・・
その時、人の子の姿が目に映った。一人で山道を歩いていた。
私達よりも少し背の高い、服装等からこの先にある農村に住んでいる子供じゃないかと思った。
珍しい。迷子なのかしら。こんなところに一人でいたら妖怪が・・・
そう思っていた矢先、辺りに不穏な空気が立ち込めた。
太陽はまだ沈んでいないのに視界が不自然な暗闇に包まれていく。
気が付くとすぐ側に妖怪の気配を感じる。嫌な予感がした。
「オマエハタベテモイイニンゲンナノカ・・・・? 」
子供の足が止まる。
危ない!ここから早く人間を逃がさないと。
その時私は一瞬、思いとどまった。
相手の妖怪にこの距離まで気が付かなかったのは私の力が衰えているからだ。
今の状態の私では、まともにぶつかっても勝てない相手なのかもしれない。
そもそも私達双子が力を無くしたのは人間のせいでもあるのだ。
そう。こいつらさえ、人間さえいなければ妹は・・・。
一瞬の躊躇がタイミングを外してしまった。
暗闇の中でハッキリとは見えないが、妖怪は子供のすぐ後ろまで来ている。
もう、間に合わない。
私はなんてことを・・・・。
その時、誰かが子供の前に立ちふさがった。
「退け、小物よ。私は四季を司るの神である。お前では私には勝てない。立ち去るがよい」
穣子の声だった。
私でも勝てるかわからない相手に力を無くしている妹が勝てるわけが無い。
妹に‘人の子など置いて逃げなさい’と言おうとしたが、
「ソウナノカァ・・・・・」
そう妖怪は呟くと、周りの景色は徐々に光を取り戻していった。
妖怪は去っていったようだ。見渡すと座り込んで小さくなっている人の子が震えていた。
怪我はしていないようだ。
「全く、人が休んでる時に限って変なのがうろうろするんだから! 」
穣子は強がっていた。少し膝が震えているのが分かる。分かっていたのだ。
今の衰えた力では勝てない相手だったのだと。
「穣子。あなたは何て無茶をするの・・・? 」
私は少し声を荒げた。
「お姉ちゃんも何で何もしなかったの!この人の子が食べられていたのかもしれないんだよ!?」
「私は穣子が心配で・・・・いいえ、ごめんなさい。本当にそうね、どうかしていたわ・・・」
あの時、私は本当にどうかしていた。そういう自覚はあった。人間を見捨ててしまおうなんて・・・
「大体人間と私達はキョーゾンっていうのなんだよ!お姉ちゃんが教えてくれたんじゃない!だから私達は・・・・」
妹から怒られるのは久しぶりだ。
元気に何とか難しい言葉を使おうとしている姿を見てつい安心して少し笑ってしまった。
「笑い事じゃあないよ! 」
「ふふ・・・ごめんなさい」
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