最終章 みんなが幸せでありますように
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て、アサキが追い付いていた。
観念したのかもともと逃げていたわけではなかったのか、シュヴァルツの身がゆっくりと沈み、地に降りた。
アサキも警戒を解かず着地した。
ぎゅ、と握られる両手であるが、左手には指の先端がない。
先ほど、第一関節から先を魔閃塊として五本ともちぎって飛ばしたためである。
シュヴァルツの動きを止めるためとはいえ無茶をしたもので、切断面がずきずきと痛む。
魔法で痛みを抑えることも可能だが、代わりに感覚が鈍くなる。現在なにが起こるか分からない異常事態であり、痛みを我慢するしかない。まあ最近は戦いの連続で痛みには慣れており、この程度はそれほど気になるものでもないが。
そんなことよりも、アサキは困っていた。
せっかくこうしてシュヴァルツに追い付いたというのに、追い掛けるに精一杯でなにを話そうかまったく考えていなかったのだ。
勿論、必要ならば戦うが、なるべくなら話し合いで済ませたい。そう思っていたのに。
しかし考えても意味のないことだった。とりあえずなにか、とアサキが口を開きかけたところシュヴァルツが襲い掛かってきたのである。右手で貫いたヴァイスを背負ったまま、先端を剣状にした左腕で。
アサキも、素早く剣を具現化させて右手に握り、魔力強化させながら攻撃を受け止めた。
こうして、アサキとシュヴァルツ二人による剣での戦いが始まった。
といっても、アサキは序盤から劣勢に立たされてしまうのだが。
まだ身体が回復していないこともあるが、それ以上にシュヴァルツの攻撃が先ほど戦った時と比べて遥かに速く重いのだ。
無言のまま振り下ろされる剣状化した腕を、アサキは必死に受け続ける。だが一撃が異常に重い。都度、足場を変えていかないと、地に沈み込んで身動きが取れなくなってしまいそうだ。
剣を具現化させた瞬間に魔力強化していなかったら、最初の一撃でへし折られていたかも知れない。
だけど、剣は保てても腕が痛いし、握る手が痺れる。そもそも本当なら、片手一本で支えられる攻撃の重さではないのだ。だけどまだ、魔閃塊のために切り飛ばした左手の指が再生していないのだから是非もない。
もう失われた指の再生が始まってはいるが、まだ透明なゼリーのよう。そのゼリーの中に、まだ完全ではない小さな骨が見えているという状態で、剣など握れるはずもない。
それを知ってか知らずか、シュヴァルツの剣は一撃ごとに重みを増していく。以前戦った時とは、桁外れの強さだ。おそらくは、至垂に続いてヴァイスの能力も取り込んだのだ。または、取り込んでいる最中なのだ。
シュヴァルツに身体を突き刺されたまま背負われているヴァイスであるが、その身体が溶け掛けている。
意識があるのかないのかぐ
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