敢闘編
第六十話 雌伏
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でも親父の言う事もごもっともな話だった。准将に昇進した後のマスコミの大攻勢は、帝国軍もたじろぐ程の勢いだった。
同盟最年少の将官、アッシュビーの再来…宇宙艦隊司令部入りを機に引っ越した官舎には連日インタビューのレポーター、TVではワイドショーの出演、特集番組…母親や妹まで大攻勢にさらされた。当然エリカとの交際も明らかにされ、彼女の実家は三ヶ月先まで予約で満杯に…。まあこの件はエリカの父親に喜ばれたが…。確かにこんな目立つ部下など誰も持ちたくないだろう。俺に注目が集まれば上司や部下までそれに巻き込まれてしまう。落ち着いて仕事など出来なくなるし。そっとしておきたい出来事も衆目にさらされてしまうのだ。休暇の後の自宅待機も、マスコミの熱を冷ます為の冷却期間の様なものだった。
「…本部長は構わないのですか?そういう人間が部下にいても」
「構わんよ。私は責任を取る立場だからな。何かあっても辞めるだけで済む。君も含めてだが、君等が頑張ってくれたらずっとこの椅子に座っていられるし、そうじゃなければさっさと次の者に譲り渡すだけだ。そうではないかね?」
「…確かに仰る通りです」
確かに仰る通りだが、責任を取る立場だからって何もしなくていい訳じゃないだろう?
「不満かね??」
「そういう訳ではありませんが、その何と言いますか、今後の方針とか、軍部として何を為すべきか、とかいろいろあると思うのですが…」
「君が考えたまえ」
「は?」
「現在の情勢を作り出したのは君だ。私は君の思いつきを採用し実現させただけに過ぎない。君の考えた情勢の今後は君にしか分からないのだよ」
「それはそうですが…」
「君はまだ地位が足りない。君が何を考えたとしても、それを実行するには地位と権力が必要だ。私には地位と権力がある。君が考え、それを私が実行する」
「でも先程何もするな、と…」
「今は目立ってはダメだ、という意味だ。雌伏の時期、と言うべきかな」
「…何故それほどまでに小官を気遣っていただけるのですか?」
「君に才能があるからだよ。深い洞察力、帝国内の知識…私にはないものを君は持っている。私はヤン大佐がそうではないか、と思っていたが、彼は元々軍人志望ではない為に軍人という職業に対して一歩引いている面がある。潜在能力は素晴らしいと思うのだが…士官学校での評価が低い、そして実務能力に欠ける…エル・ファシルでの功績は認めていてもそれに納得しない者が多いのだ。だが君は違う。術科学校卒業後、エル・ファシル警備艦隊で功績を残し、脱出行にも参加、その後の将官推薦での士官学校入校、再度再編成ったEFSFで更に実績を残し、先日のイゼルローン要塞攻略作戦にて成功を修めた。トリューニヒト氏も君を買っている…まあトリューニヒト氏の事はともかく、アッシュビー提督の再来と言われる君の才幹に嘘偽
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