暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
GX編
第133話:目は曇り、耳は塞がる
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じていた。

「あれは……昔の夢? まだ、覚えてたんだな……いや、忘れる訳がない。キャロルとの事は、全部……」

 想い出の焼却により、自分が誰であったか等も忘れつつあるハンスだがキャロルとの事だけは執拗に覚えていた。それだけ彼の中にあるキャロルへの愛は強かった。

「キャロル……?」

 そう言えば、眠る直前キャロルは一緒に居た事を思い出し、ハンスはベッドの上で起き上がり周りを見渡した。ベッドはハンスが流した血で赤黒く汚れているが、肝心のキャロルの姿は何処にもない。

 何だか嫌な予感がする。ハンスは手早く起きて衣服を着ると、部屋を出てキャロルの行き先を探した。

 そして彼は、レイアからの緊急通信により深淵の竜宮にてキャロルが窮地に陥っている事を知るのだった。




***




 場所は戻り、深淵の竜宮ではまさかの目の前に現れたウェル博士にクリス達がド肝を抜かれていた。

 事前にここに彼が居る事は知っていた。聖遺物と融合した形になる彼を普通の刑務所に収監は出来ないから、聖遺物扱いしてここに押し込んでいる事を。
 だがここは曲がりなりにも危険物などを保管する場所であるので、そう簡単に出てくる事は無いだろうと思っていた。それがこうして目の前に居る事に、特に切歌と調は驚くと同時に嫌な事を思い出し顔を顰めずにはいられなかった。

 そんな彼女達の気持ちなど無視して、ウェル博士はギアを纏っている切歌と調を見て鼻で笑った。

「へへ〜ん! 旧世代のLiNKERぶっ込んで、騙し騙しのギア運用という訳ね?」

 ウェル博士の専門は生化学。人体に対しては聖遺物以上に詳しい知識を持つ彼は、フロンティア事変に於いてはマリア達の使うLiNKERの調整・生成を行っていた。フロンティア事変収束の時点で彼手製のLiNKERは全て失われていたので了子も彼の作ったLiNKERの組成は知らない。だが漠然と、そう違いは無いだろうと思っていた。

 のだが、彼の口ぶりからするとどうもそうという訳ではないらしい。

「優しさで出来たLiNKERは、僕が作った物だけ! そんなので戦わされてるなんて、不憫過ぎて笑いが止まらん!!」

『聞き捨てならないわね。私手製のLiNKERが優しくないとでも!?』

 通信でウェル博士の言葉を聞いていた了子が、彼の発言に物申す。しかし通信機の声が届くのはS.O.N.G.所属の4人だけなので、了子の怒りを孕んだ声を聞くのも4人だけであった。

「りょ、了子さん、落ち着いて」
「そうデス。それにあっちは不憫の一等賞、了子さんが気にする事じゃないデス」

 プライドを刺激されて怒りに震える了子を切歌と調が通信機越しに宥めようとするが、一方でここにも怒りを感じている者が居た。
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