暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
GX編
第133話:目は曇り、耳は塞がる
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滲ませつつ、顔を俯かせ帽子を目深に被った。しかしそれもそう長い時間ではなく、直ぐに顔を上げると男性は優しい笑みを浮かべてしゃがみ込み、少年と目線を合わせた。

「だ……れ……?」

 男性に敵意が無い事が分かると、少年は心此処に非ずと言った声で問い掛けた。

「私は君のお父さんとお母さんの友達さ。今日は、娘を連れて遊びに来たつもりだったんだが……こんな事になって、残念だ」

 そう言えば家を出る前、両親から今日は客が来るから早めに帰ってくるように言われていたのを思い出す。誰が来るのかと聞いたら古い友人としか言われなかったのでどんな人が来るのかは分からなかったが。

 その時の両親の昔を懐かしむような顔を思い出し、少年は悲しさがぶり返し涙を流した。すると2人の様子を見ていた少女が少年を優しく抱きしめ慰めた。

「あぁ、泣かないで! ねぇパパ、この子……」
「分かっているよ、”キャロル”。君、”ハンス”だろう? 君の事は君のご両親から聞いているんだ。もし良ければ、家に来ないかい?」

 このままでは少年――ハンスは、呆然自失としたまま衰弱するか戻って来た村人により命を奪われる。そんな事を彼の両親が望むはずがないと、男性――イザークはハンスを保護する事を決めた。それは彼の一存ではなく、彼の娘のキャロルも望むところであった。

「で、でも……僕……」
「大丈夫。そんなに広い家じゃないけど、元々私とキャロルしかいないからね。1人くらい増えてもへっちゃらさ」

 イザークの優しさ、そしてキャロルの温かさが、両親を失い冷え切ったハンスの心を温めてくれる。縋る相手が居なくなったハンスは、誘蛾灯に引かれるように伸ばされた救いの手を取った。

「う、うぅ――――!?」

 孤独を救ってくれたイザークとキャロルに感謝し、ハンスは今度は嬉しさに涙を流した。イザークはそんなハンスを優しく撫で、キャロルは彼を安心させるように優しい笑みを浮かべた。

「よろしく……! お願い、します!」
「よろしく、ハンス君」
「私キャロル! ハンス、よろしくね!」

 これがハンスとキャロルの出会いであった。









「――――ん?」

 ふと目を覚ました時、ハンスは目元が濡れていることに気付いた。濡れた目元を拭おうと手を挙げた瞬間、全身を鋭い痛みが襲う。

「うぐっ?! い、ぁ……」

 視線を下に向ければ、体のあちこちに夥しい傷跡がある。それはキャロルが、ハンスの脳裏に自身の存在を刻み付けようと付けた数々の傷跡。

 常人であれば発狂するような傷でも、ハンスにとっては自分とキャロルを繋ぐ頑丈な錠前の様な物であり、彼女との愛の印であった。故にハンスは、痛みに対し恐怖などを感じるどころか愛しさを感
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