暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
GX編
第133話:目は曇り、耳は塞がる
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 今から数百年前……焼かれた家の前に、1人の少年が涙を流しながら座り込んでいた。

 表情は絶望に固まり、開かれた目からは止め処なく涙が零れ落ちている。

「父さん……母さん……」

 少年は呆然としながら父と母を呼ぶが、その声に答える者はいない。居る筈がない。彼が呼んだ両親は、今正に燃え盛る家と運命を共にしたのだから。

 少年の家が燃えているのは、ただの事故や失火などではない。意図的に火を付けられたのだ。

 少年の両親は、共に異端と言うべき技術に手を出していた。それは人々の生活を少しでも豊かにする為。救いを求める、困っている人々を助ける為の技術を求めての事であった。

 だがこの時代に於いて、そうした技術は人々から忌避されていた。故に少年の両親は、極力その技術の事をひた隠しにして細々と研究と活動を続けていた。

 その両親が手を出していた技術とは、所謂錬金術というもの。ただし、この時期は錬金術から魔法が派生しつつある時期であり、少年の両親はその魔法に手を伸ばしている最中であった。

 その魔法を、不幸にも何も知らない村人に見られた。村人は少年の両親が魔法を使っているのを知ると、2人を異端に手を出す危険人物として糾弾し、私刑に近い形で家に火をつけた。幸いな事に少年はその瞬間、偶々家を空けており返ってきた時には既に家全体が火に包まれた後だった。

 帰ってきた少年が目にしたのは、燃え盛る家とそれを囲む村人たち。村人たちは口々に少年達家族を魔女だ何だと罵り、彼ら家族の死を浄化だとか宣っていた。

 家が燃えている光景にはショックを受けた少年だが、それ以上に家を取り囲む村人達が恐ろしくて物陰から出る事が出来ない。そのまま物陰に隠れて涙を流しながら見ていると、村人達は気が済んだのか解散していった。

 家の周りから村人たちが消えたのを見て、少年はよろよろと物陰から姿を現し、そして今だ炎に包まれたままの家の前で力無く座り込んだ。その拍子に持っていたかごから零れ落ちる、近くの山で採って来た山菜や薬草の数々。

「大丈夫?」

 どれ程少年がそうしていただろう。唐突に少年の耳に1人の少女の声が響いた。と同時に、その声の主だろう少女が彼の顔を覗き込んだ。
 金髪に美しい瞳を持つ可愛い少女。しかし今の少年には、その可愛さに見惚れているだけの余裕が無い。

「どうしたんだい?」
「あ、パパ!」

 今度は男性の声が響いた。少女だけならともかく、成人した男性の声に村人が戻って来たのかと少年がびくりと震えて声のする方を見ると、そこには見覚えの無い眼鏡をかけた男性が近付いてきていた。

 男性は少年と燃えている家を見比べると、悲しそうな顔を少年に向けた。

「そうか……彼らは……」

 男性は声に悲しさを
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