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strike witches the witches of stratos
Ep-01
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淡い青の色彩に、幾重もたなびく白い雲。
欧州の大国、カールスラントの東端に位置するワルシャワ空軍基地の上空は、つかの間の晴れ間を見せていた。
前日に降った雪のおかげで周囲は一面の銀世界となり、一段と冷え込んでいたが、屋内は窓から差し込む陽ざしのおかげで思いのほか暖かい。
そんな、ある日の昼下がり。扶桑皇国空軍中尉、加藤武子は冬の陽光が差し込む宿舎の廊下を、一人、黙然と歩いていた。
「……はあ」
形の良い唇から、深いため息がもれた。
その肩は幾分か下がり気味で、足取りはさながら仕事帰りのサラリーマンの様に重く、背中に哀愁が漂う姿は、とても十代の少女とは思えない。
脳裏に浮かぶのは数分前のこと。基地の戦闘航空団司令、フーベルタ・フォン・ボニン少佐の部屋でチェスの相手をしていた時の事だ。
対局も終盤、後一手で勝利というところで、かかってきた一本の電話。それが全ての始まりだった。
そして無情にも、その一本の電話が武子の非番に終わりを告げることとなった。
気が付けば、すでに目的地である上官の部屋の前。
簡素な鋼板のドアを前にして、武子は再び大きなため息をついた。
突然任務が入るのはいつもの事だ。けれど、切り替えが素早くできるかといえば、早々できるものでもない。
とはいえ、いつまでも凹んでいる訳にもいかない。一時間後には出撃しなければならないのだ。 覚悟を決めた武子は、硬質なドアをノックした。
「優刀、いる?」
一定の間隔でドアをたたく。けれど、いくら呼んでも部屋の中からは返事が返ってこない。
「どこ行っちゃったのかしら」
時刻は正午を少し過ぎた辺り。食堂に昼食を取りに出かけたのかもしれない。
そう考えて部屋を後にしようとした。そのとき、
「――なんだフジ、こんなところにいたのか」
「ひゃ!」
不意に背後から声をかけられて、武子は思わず仰け反った。
「あ、綾香……」
慌てて振り返ると、目の前に一人の少女が立っていた。
短めにカットされた黒髪。切れ長の目からは、明朗な印象を与える。白地に青のラインが入った扶桑皇国空軍一種軍装を着込んだ少女。扶桑皇国空軍中尉、黒江綾香は言った。
「フジ、優刀が呼んでるぞ」
「優刀が?」
「ああ。今、外で豚汁を作っていてな」
「……へぇ?」
予想の斜め上を行く答えに、武子は目を丸くする。
「ご、ごめんなさい。もう一度言ってくれるかしら?」
「ん? だから、外で豚汁を作っているんだよ」
どうやら聞き間違いではないらしい。
まともに返事することも出来ず、武子は呆気にとられた。
彼――緋村優刀《ひむらゆうと》
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