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不可能男との約束
選択の始まり
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ない。
民を守り、仲間を守り、そして主君を守る。
騎士として行う事が当たり前の三つを、どれ一つとして達成できないというのだからだ。これで、自分が本当にただの無能ならば、仕方ないと思えたかもしれない。
しかし、自分達には力があるのだ。自惚れでも、過信ではない。人を傷つける事も、守る事も出来る力があるという事を実感しているのである。
それなのに自分達はこの状況で何も出来ない。
不甲斐ないの言葉以外は思いつかないのである。
だけど、そこで問題が発生する。
騎士というのは人々を守る存在である。だから、今、ここで動こうとしている人々は騎士達の力も頼りにしているのではないのかと。
本来なら誇らしいと思う評価だが、この状況では最悪としか言いようがなかった。
自分達を頼ってくれるのは嬉しい。だけど、自分達では民を守りきることが出来ないのだ。信頼を仇にして返す事しかできないという最悪の連鎖。
だからこその今回の臨時生徒会で騎士代表として自分がわざと負けて自分達は上の立場から、民と同じ立場に降りる。
そうすることしか、武蔵を守れないと歯噛みしながら。
そして自分と相対するというならば、特務クラスの可能性があるのも確かだが、普通ならば勝てる可能性が高い副長が出てくると思っていたのだ。
そしてそこで自分が負ければ───今までの評価を全てとは言わなくとも、少しは覆すことが出来ると思っていたのだ。
それなのに

「どうして……!」

どうして

「貴方の強さを示すことが出来るのに……」

それなのに

「何故、貴方はそうやって何時もちゃんと相対してくれませんの……?」

悔しいですわ……と思う。
自分では彼の汚名を払拭することも出来ないと言われているみたいで。
だけど、それを知られるのが嫌で、ミトツダイラはきっと挑むかのような視線で、ただ彼を見た。
そんな彼はその顔を珍しく困ったという感じの表情を出し、何かを言うべきか、それとも何も言うまいかを悩み、口を無意識に動かそうとして、何かを言おうとしたが

「……」

沈黙した。
何も語る事はないと言わんばかりに。

……上等ですわ。

そういうつもりならこちらが手加減する理由などない。
今の自分は感情や理由はどうあれ、彼らの敵に回っているのである。なら、本気で戦っても別に問題ないだろう。
言う気がないなら、無理矢理言わせたようと思い、一歩前に踏み出した。
そのタイミングに

「あーー。ちょっと待ったネイト。ステイステイ」

馬鹿が割り込んできた。

「……何ですの? 今、私はそこのリアルヤンキーを思いっきり痛めつけて、あひんあひん言わせて、その後に言いたいことを言わせて屈服させる気なんですが……」

「……それ。俺がマゾだったらこの時点でかなり
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