第八十二話 わるいおうさま
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呼んだ。
「ロトシルトか、どういうつもりでオレの前に現れたのか、引っかかる部分もあるが……」
タルブ・ブランデーを満たしたブランデーグラスを転がしながらマクシミリアンは独り言を言った。
……暫くすると、ピール腹の中年男の姿をしたクーペがやって来た。
「失礼いたします」
「よく来たクーペ。相変わらず何にでも変身出来るのだな」
「ありがとうございます」
「今日呼んだのは、先日ロトシルトと名乗るゲルマニアの貴族に出会ってな。彼の事について調べて欲しい」
「ロトシルトですか。もしやこの様な顔ではございませんでしたか?」
そう言ってクーペは、粘土細工の様に自分の顔を捏ね回すと、マクシミリアンが知るロトシルトそっくりの顔に変化した。
「おお、そうだ、その顔だよ」
「その男でしたら既に調べは付いております」
「手際が良いな。かなりの有名人なのか?」
「御意。相手は仮想敵の帝政ゲルマニア。しかも戦争状態になれば真っ先に激突する、西の雄、フランケン大公の重鎮ですからね」
「フランケン大公……確か選帝侯だったな。話には聞いた事があるがどんな人物なのだろう」
「そうですね……陛下は『英雄王のロレーヌ戦役』という演劇をご覧になった事はございますか?」
マクシミリアンは先日見た。演劇の事を思い出した。
「この前に見たな」
「それでしたら話は早いです。その中で、かの烈風カリンと一騎打ちをした敵役を覚えておいででしょうか?」
「あの大男の……という事はあの大男がフランケン大公だと?」
「左様にございます。もっとも、演劇では烈風カリンの勝ちでしたが、実際は引き分けでした」
「監督、脚本の都合で勝利に変わったと?」
「左様にございます。史実では、鶏が鳴く時刻に一騎打ちを始め、カラスが鳴く頃に一騎打ちを終える。そのサイクルを三日間続けても決着がつかなかったそうにございます」
「二人とも精神切れを起こさなかったというのか……」
マクシミリアンは、魔力無限のチートを得て少々天狗になっていたが、この話を聞いて上には上がいる事を思い知らされた。
「話を戻しますが、ロトシルトはフランケン大公の下では財務卿の任に就いており、同時に銀行家としてのコネクションを生かし政商としてゲルマニア全土に影響力を持つ男です」
「なるほど、大物だな」
「御意」
「その大物がアポ無しとはいえ、僕に目通りのみ求めてきた……何か企んでいるのだろうか。それとも商売のみでトリステインに版図を広げる為だけに近づいて来たのか。その辺りを踏まえて、クーペはロトシルトがなにを企んでいるか探って欲しい」
「承知いたしました。早速行って参ります」
「いくらな
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