第八十二話 わるいおうさま
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大男と一騎打ちを演じていた。
「お、烈風カリンの一騎打ちだな」
「確かお母さまは男と偽って、フィリップ3世陛下に御使えしていたのですね」
一部の者しか烈風カリンが実は女だと知らない為、大抵の烈風カリン役は、売り出し中の二枚目俳優が演じる事になっているのが通例だった。
チラリとマリアンヌの方を見ると、何処か懐かしそうにしていた。
烈風カリンと大男の一騎打ちは、いよいよ佳境に入っていた。
『往くぞ! 我が杖に全てを賭けて!』
『うおおお! おのれ烈風カリン!』
烈風カリン役のイケメン俳優が、敵役の大男を倒すと、一部の観客席から黄色い声が上がった。
「モテモテだな、キミの母君は」
「お母様も昔はやんちゃだったんですね」
「今でもヤンチャだと思うがね」
マクシミリアンとカトレアが、笑い会っていると場内にアナウンスが流れた。
『ご来場の皆様、以上で第一幕は終了にございます。休憩時間を挟みまして、第二幕をお送りいたします』
『拡声』の魔法で劇場内に響いた声は、休憩時間を告げると幕が降り始めた。長い演劇の為、途中で休憩時間が挟まれるのだ。
「少し劇場内を散歩しようか、カトレアは来るかい?」
「はい、御供させていただきます」
「アンリエッタはどうする?」
「私はここでりんごジュースを飲んでいますので結構です」
「そうか、それでは皆、母上とアンリエッタをよろしく頼む」
「御意!」
護衛の魔法衛士達に声を掛け、マクシミリアンとカトレアは来賓室から出ると、廊下側に居たミシェルが近寄ってきた。
「陛下どちらへ?」
「休憩がてら散歩だ」
「ミシェルも着いて来る?」
「お二人だけにしておけませんから」
ミシェルも二人の邪魔にならないように着いてくる事になった。
廊下に出ると、他の来賓室に客達も休憩で廊下に出てきて、マクシミリアン達の姿を見ると驚いた顔をして頭を下げてきた。
「陛下!」
「国王陛下だ!」
「どうもどうも。ああ、畏まった礼はいいよ」
マクシミリアンは礼が不要である事を伝えると、そそくさと立ち去った。
10分ほど館内を散歩していると、脂ぎった商人風の男が畏まりながらマクシミリアンの側にやって来た。すかさす、ミシェルがマクシミリアン達の前に立つ。
「それ以上近づくな。畏れ多くも国王陛下の御前であるぞ」
ミシェルが凛とした声で商人風の男を制した。
「これは失礼いたしました。私の名はロトシルトと申します。国王陛下に一目お会いしたく、無礼を承知で参りました」
ロトシルトと名乗った男は、手もみしながらニコニコと笑顔をマクシミリアンらに向けた。
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