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水の国の王は転生者
第八十二話 わるいおうさま
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塗りこむと、ペーストは人の肉にそっくりに変化し、最終的にクーペは女性の身体に変化してしまった。
 用意しておいたメイド服を着ると、最後の仕上げに自分の顔を粘土細工の様に変化させ、何処にでも居るような凡庸な女性の顔に変化させ、何食わぬ顔で空き部屋を出て行った。

 これがクーペの『変化』だ。
 マクシミリアンの推測では土魔法の一種とだけしか分からない、諜報局長ジョゼフ・ド・クーペの秘術だった。

(もう一押し……)

 クーペは誰にも気付かれないように内心呟いた。

 クーペは腹の底が読めない事から、何かと誤解されがちだが、マクシミリアンへの忠誠は本物だ。

(もう一押しで、陛下は『本物』になられる)

 マクシミリアンがアルビオン王家を駆逐し、アルビオン王に君臨する決断をすれば、謂わば最後の一線を越えれば、マクシミリアンは大王としての階段のとしてのスタートラインに立てる。

 クーペはそう思っていたし願ってもいた。

(そういう決断をされれば、このクーペ、持てる全ての力で、陛下の覇業をお助けいたします)

 だが、マクシミリアンの覚醒を阻むものが居た。

 王妃のカトレアだ。

(あの女が陛下に余計な事を吹き込んだお陰で、陛下の踏ん切りが付かないのだ……!)

 外付けの良心回路ともいえるカトレアの存在に、クーペは歯噛みした。

(胎盤のみ捧げれば良いものを……)

 凍て付いた憤懣(ふんまん)を隠しながら、メイド服の女性姿のクーペは廊下を歩き去った。







                      ☆        ☆        ☆






 とある日、マクシミリアンは妻のカトレアと妹のアンリエッタ母のマリアンヌの国王一家で、トリスタニア市内のタリアリージュ・ロワイヤル座劇場にて演劇の鑑賞をした。

 演劇の演目は『英雄王のロレーヌ戦役』で、英雄王フィリップ3世の活躍を描いた演劇だが、女性陣には余り評判はよろしくなかった。

「ふぁ……つまんないわ」

「みっともないわアンリエッタ」

 などと、アンリエッタなどはおおっぴらに欠伸をして、マリアンヌにたしなめられたりもした。

 来賓室は国王一家四人と護衛の魔法衛士数人が居た。廊下へと通じるドアの外には護衛の衛兵がガッチリ警備を固めていて、警備体制に万全の注意を払っていた。

「カトレアはどうだ? 楽しくないか?」

「マクシミリアンさまとご一緒でしたら、楽しくないなんてありませんわ」

(それって、オレが居なきゃつまらない、っていう風にとらえられるんじゃね?)

 そう考えていると演劇はクライマックスに入っていた。

 ピンクブロンドの髪の二枚目俳優が、敵役の
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