第五十八話 思惑 U
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そうなれば八万隻近い兵力となった筈…。ミュッケンベルガーも頭が痛いだろう。本来なら自分自身で指揮したいだろうに、国内問題のせいで外敵に対処する戦力をそちらに割かねばならないとは…。
政府、軍、貴族。一枚岩になれば磐石な体制を築けるものを。まあ一枚岩になどなられたら俺がのしあがる隙は無くなってしまうのだが…。
「順調にいけば…各艦隊を充足状態にもっていく迄に二か月、訓練に一ヶ月、アムリッツァ迄の移動に一ヶ月…五月の半ばにはオーディンから出撃出来るでしょう」
「イゼルローン、アムリッツァが叛徒共の手に落ちて早一ヶ月…その後情報は入っておりますか」
「叛乱軍はアムリッツァを固める事を一心にしておる様ですな。こちらの偵察部隊を追い払う程度で、大きな戦闘はありません」
「なるほど」
「以上が現在の状況です。伯にはお手数をおかけするが、何卒よろしくお願い申し上げる」
「いや、私には彼等という優秀な補佐役が居るのでな。造作もない」
元帥が手を叩くと、従卒がコーヒーセットとケーキを運び入れた。以外に甘党の様だ…。従卒が出ていくと再び元帥が口を開く。
「それと…もう一つ」
「何でしょう」
「伯爵はリッテンハイム侯に会われましたか?今日、この建物で」
「会いました。それが何か」
「実は先程、リッテンハイム侯、ブラウンシュヴァイク公がこの部屋に見えられましてな。この未曾有の国難に協力したい、と申されました」
「そうですか…いや、侯の姿を見た時にその様な気はしておりました。ブラウンシュヴァイク一門からは既に私が軍に復帰している。対抗心から同じ様に侯も一門の誰かを軍に復帰させるのではないかと…」
「その通りなのです。重ねてお聞きするが、伯は一門の為に復帰されたのではない、そうですな?」
「はい」
「どうもブラウンシュヴァイク公はそうは受け取ってはいない様でしてな。それに刺激されたのがリッテンハイム侯…どなたが軍に復帰するかはまだ分かりませんが、お耳に入れておいた方がよいと思いましてな」
「…心しておきましょう」
しばしの間沈黙が流れる。苺のショートケーキを食べるのは久しぶりだが、どうも甘さを感じない。下手をすると遠征軍にまで貴族間の派閥争いが持ち込まれ兼ねない…。奴等には危機感がないのだろうか…それともこの危機を自分達の勢力の伸長に使うつもりなのか…ふん、俺も奴等も同じ穴の狢という訳だ…。
宇宙暦793年1月20日12:00
アムリッツァ星系、チャンディーガル、シヴァーリク郊外、自由惑星同盟軍、宇宙艦隊司令部、ヤマト・ウィンチェスター
惑星チャンディーガル。いいところだな…というか、荷役の馬車、どこまでも広がる小麦畑…どう見ても中世ヨーロッパなんだなあ…。まあこの風景が中世ヨーロッパではないという事は、今俺が立っている宇宙
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