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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
第五十八話 思惑 U
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いいだろう。伯と元帥の会話だから俺達が口を挟む訳にはいかないが、ただ聞かされているだけでもおぞましい事実だ。イゼルローンに増援を送りたくても送れない状態だったのだ。だが伯はブラウンシュヴァイク一門の大貴族、紐付きどころではない。そこはどう思っているのだろうか。伯も同様だった様だ。同じ疑問を口にした。
「紐付き、と言われたが私などブラウンシュヴァイク一門そのものですぞ?その辺りはどうお考えか」
「…伯はブラウンシュヴァイク公に頼まれて軍に復帰なさいましたか?」
「いや、それはない。私の意志だ。今ここにいる彼等にも以前に話した事があるのだが、私が軍に参加したのは貴族として藩屏として何かを為さねば成らぬ、という想いによるものだ」
「そう、聞いております。無論、今ここにいる彼等からではありませんが」

 軍上層部としても伯爵の復帰は半信半疑、物好きの類いにしか見えなかったのだろう。遊び半分に武勲の狩り場にされては堪らない。伯本人が戦死でもしたら、責任は無くとも文句を言われるのは軍なのだ。軍は伯を調査したのだろう、伯の近しい所から聞こえて来る声…調査自体は簡単だ。何しろ紐付きが大勢いるのだ、そこから探っていけばいい。そして軍は判断した、伯の行為はブラウンシュヴァイク公の思惑や差し金ではない、という事を。そして試金石としてイゼルローン要塞への増援として伯を送り出した…。
「重ね重ねイゼルローン要塞を救援出来なかった事は私の力不足によるもの。慙愧に耐えません」
「伯のせいではありません。要塞は難攻不落、という軍の慢心によるもの。更に帝国本土に叛徒共の侵入をを許したのは軍の責任です…再度奪還軍の一員として加わっていただくが、よろしいか」
「それは私も望む所…話を戻しましょう、先程軍編成が進んでいないと申されたが、現在の状況を教えていただきたい」
奪還軍…俺達もそれに加わる事が出来る、有難い限りだ。どの様な陣立てになるのだろうか…。
「はい。奪還軍司令官にはクライスト大将を考えております。艦隊司令官としてまず伯ですな。そしてゼークト中将、シュトックハウゼン中将、ギースラー中将…今の所はこの五名という事になります。本当なら私自らが陣頭に立ちたいのですが、国務尚書、軍務尚書そして統帥本部長に止められました」
「…何故です?」
「奪還が成功すれば問題がない…だが失敗した場合、貴族達が何を考えるか分からぬ、と」
貴族達…門閥貴族達が反乱を考えているとでもいうのだろうか。いや、反乱は無くとも地方王国として独立するかもしれないという事か?あり得ない話ではない。それに備える為にミュッケンベルガーを残す…。確かにこの男なら貴族達に睨みを効かせる事が出来るだろう。しかし、その場合誰を率いるのだろうか…。
「…何を考えるか分からぬ、か…この国難に自らの利益のみを優先
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