第七十三話 何の価値もない思想家その五
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「しかしな」
「それでもなのね」
「読んでいたしな」
「面白いお話ね」
「まあそうした人もいる位にだ」
「漫画は読んでもいいのね」
「得られるものはあるからな」
それはしっかり、というのだ。
「面白くも楽しくもあるだろ」
「そうした作品こそためになるわ」
「そうだ、吉本の文章は面白くも楽しくもない」
読んでもというのだ。
「全くな」
「そうなのね」
「そうだ、読んですぐにわからない代物でな」
「面白くも楽しくもない」
「そういうことだ」
「本当に価値がないことはわかったわ」
咲にしてもだ。
「じゃあ私読まないわ」
「そうしろ、本当に読むだけ無駄だ」
それこそとだ、父は真面目な顔で答えた。
「だから漫画や小説を読んでおくことだ」
「ライトノベルとか」
「純文学でもな、あとゲームをしてもな」
こちらを楽しんでもというのだ。
「いいからな」
「じゃあこのまま読んでいくわね」
「それがいいわね、結局中身がない思想書なんて」
母も言ってきた。
「読んでも仕方ないわ、中身がある漫画やライトノベルの方がね」
「ずっと読んでいいわね」
「結局はね、しかし日本の学者さんはね」
「質が悪いのね、お母さんが見ても」
「マスコミ関係もね」
「知識人って言われる人達は」
「テレビに四角い眼鏡で赤い茸頭の女性の学者さんなんか」
この人物はというのだ。
「特にね」
「あの人学者には思えない位酷いわね」
「あれで学者になれるんだったら」
そのうえで通用するならというのだ。
「誰でもなれるわよ」
「そうよね」
「大学卒業するには論文書かないといけないのよ」
母はこのことも話した。
「だからお父さんもお母さんもね」
「論文書いたわよね」
「そうしたわよ」
「さもないと卒業出来ないわね」
「その論文教授さんに散々言われたけれど」
自分のその時のことも話した。
「しかしあの人よりはね」
「ましな論文なの」
「その自信あるわ、あんなのでね」
テレビでの発言を見ての言葉だ、そこでもう知性がわかるというのだ。
「まともな論文書けないでしょ」
「そうだな」
父も焼酎を飲みながら頷いた、ロックのそれは実に美味く感じた。
「あんなのでな」
「まともな論文なんてね」
「書けないな」
「子供の作文すら」
そのレベルのものすらというのだ。
「書けないでしょ」
「そうだろうな」
「それでも学者さんとして通用するから」
「ある意味凄いな」
「私論文書いたことないからわからないけれど」
咲は高校生として話した、高校生それも一年の一学期が終わったところで論文のことはわからないのが普通だ。
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