第二部 1978年
影の政府
魔都ニューヨーク その1
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ふいに大統領は、紫煙を燻らせながら、補佐官の方を振り返り、
「昨日の友は今日の敵、と言う事もありうる」
と、感情をこめて見上げた目には、深い憂慮を浮かばせ、
「やはりゼオライマーという機体は、この世に存在しないほうが良い」と、補佐官に漏らすも、
「火星の件が片付いた後でも宜しいのでは」との意見に頷き、隣室に退いた。
ここで、大統領補佐官という日本人になじみのない役職について説明を許してもらいたい。
国家安全保障問題担当大統領補佐官は、朝鮮動乱の熱戦冷めやらぬ1953年に時の大統領、アイゼンハワーによって設置された非常職。
ホワイトハウスの一部屋を執務室として与えられ、常に大統領に近侍していた為、時代を経るにしたがって、その利益にあやかろうとする有象無象の輩が、何時しか頼みとする存在になった。
最初期は毎年の様に交代していたが、大統領の退任まで居座る例も出始め、閣僚に比する影響力を行使した。
大統領のゼオライマー排除を危ぶんだ補佐官は、執務室に戻るなり、
「早速だが、日本の御剣公に連絡を取って欲しい」と、事務官を呼び寄せ、
「明後日のニューヨークの国連総会の前に、私の所まで来るように」と命じた。
事務官は、驚きの色を隠さずに、
「彼は、今の将軍の親族ですぞ。おいそれと、簡単にはこれますまい」と、慌てるも、
「ゼオライマーの件に関してと、伝えて置け」と言うなり、カバンを持って、そのまま出て行く。
ダレス国際空港から、ユナイテッド航空に乗り、もう一つの職場に帰ってしまった。
ジョージア州のニューアーク空港からマンハッタンに向かう車の中で、資料を読んでいる補佐官が、
「私のゼミに来る、東欧のご令息というのは、どんな人物なのかね」と、脇に居る男に訊ねた。
脇に居る男は、彼の秘書で、
「先生、なんでも東ドイツの戦術機隊長をしていた人物で、外交官の親族と聞き及んでいます」
補佐官は、資料をどけ、彼の方に目線を動かし、
「ほう、外交関係者の子息と」
「そういう先生も、元はと言えばポーランドの、名の知れた貴族の出ではありませんか。
自由社会か、社会主義の違いはありますが、貴族の子息で、父君が外交官。境遇が似て居りますな」
「うむ」
「実は世界各国との交換留学生をとっているフルブライト財団の方で、東独の方に話を持ち込んだ折。
向こうの議長から、子息をぜひ送りたいと申し出がありまして」
「なに、フルブライト財団が東独政府に」
「はい。東独政府からの依頼ですから、財団を通じ、ロシア研究所の有るハーバート大学にも声が掛かりました。
東独議長の子息などとは嫌がっておりました所を、わがコロンビア大の方でお引き受けした模様です」
「聞いては居るが、例の光線級吶喊(
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