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冥王来訪
第二部 1978年
影の政府
魔都ニューヨーク その1
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「恐れながら、副大統領も関係して居ります。彼の御実家は、その石油財閥。
このままいけば副大統領と事を構えることになりますな」
「困ったものだ。日本政府は何をしているんだ……」

 この男は、各国の指導者層と違って、偽りの平和に惑溺しなかった。
いずれ、BETAによる再侵略の日も近いと、心より(おそ)れていた。
万事、その様に考え、
「今、博士に美女に入れ込み、恋路に熱を上げられては、困る。
地上のBETAが消えただけで、火星や月には山ほどいるのだぞ……
少なくとも太陽系より、BETAという怪獣を、消してもらわねば、この合衆国も危うい」
「何とか、ご破算に出来れば、違うのでしょうが……、若気の至りとは、困りますな」
長官は、一頻り思案した後、思い付いたかのように、膝を打ち、
「では彼を、客人として招こう。
近いうち、曙計画の事で、(さかき)政務次官が訪米する予定になっているから、それを利用しよう」
「私の方で、国防総省に掛け合って、木原を、公式訪問団に入れる様に手配いたします」
「よし、その線で行きたまえ」



 CIA長官の憂慮を余所に、一方ホワイトハウスでは大統領の下に秘密報告が上げられていた。
黄昏を執務室から眺める大統領に、国家安全保障問題担当大統領補佐官から、
「実に激しい死闘を繰り広げて居ります。
あの若い男女(ふたり)、ゼオライマーのパイロット、木原マサキと、副操縦士の氷室美久。
これまでに手掛けたハイヴ攻略は既に五か所にも達して居ります。
しかも、此方の調べでは中共のカシュガル以外は、全くの損害無しであることが判明いたしました。
 なお、これらの軍事作戦には、KGBも驚いたようで工作隊を幾度となく送り込んでいますが、速やかに排除されており、闇の事件として処理する心算でしょう」
「それで……」と、大統領は、初めて口を開き、訊ねた。
「現在までに報告を受けた所によりますと、KGBの工作員と思しき者たちが、続々と入国してきております。
既に30名ほどが確認され、FBIでは監視体制を引いております」
おもむろに懐中より、ステンレス製の葉巻チューブを取り出し、葉巻を咥え、火を点けた。
「たった二人の力でここまで戦ってきたのだ。なんと形容したらいいのか。言葉にはならない」
「同感です」と、五十路(いそじ)に入ったばかりの補佐官は、力強く答えた。

 執務室から眺める夕日は、何時もに増して美しく、また悲しげだった。
ゼオライマーという超兵器のお陰で、地上のハイヴは攻略され、人類に反抗の猶予が出来たの事実。
木原マサキという人物によって、この世界に一時の平和がもたらされようとしていた。 
 だが、大統領は心の中で、彼の手で、ソ連首脳部が抹殺された事を、憂慮し始める。 

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