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冥王来訪
第二部 1978年
影の政府
魔都ニューヨーク その1
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 木原マサキの動向は、国際社会の耳目(じもく)を集めた。
一人ソ連の首都に乗り込み、最高会議議長とKGB長官を抹殺した男、としてだけばかりではない。
BETAの解析をした天才科学者として、また無敵のスーパーロボット、天のゼオライマーパイロットとしても。
 そんな彼の東ドイツ訪問を受け、その事態に一人、憂う人物がいた。
 米国対外諜報機関のトップ、CIA長官であった。
彼は、東独政府の怪しげな動きを受けて、ラングレーのCIA本部では、臨時会合が持たれた。

長官は、深い憂いを、満面にたたえながら、
「何、木原博士が、東独を訪ねたと。まことか」
「はい、その事実は間違いないかと」
「いくら、優秀な科学者とは言え、彼は青年。
見目麗しい、珠玉(しゅぎょく)の様な令嬢に、引き合わされれば、絡め捕られる危険性は高い」
「まさか。彼は、日本政府や西ドイツに、何かしらを要求した、と聞いておりませんが」
「いや、どんな聖人君子であっても、人間の奥底にある情、と言うのは否定できない。
それに独身者だ……なおさら危険だ」
「ではこちらでも、驚くような美女を、仕立て上げますか……」
「彼は、見え透いた餌に食らいつくような人物でもあるまい。それ故に恐ろしいのだよ。
ところで、連中が、引き合わせた相手などは、見当がついているのかね」
「こちらの写真を、ご覧ください」
と、長官に一様の写真を見せ、
「アイリスディーナ・ベルンハルトか。なんと……可憐な娘ではないか。どの様な立場で」
「東独軍の戦術機隊長の妹です。年の頃は18歳」
「なぜ、そんな話が……」
「先頃、ソ連に殺されたアスクマン少佐からです。
我が方の工作員が、生前の彼に接触した際、手に入れた物です」
「まさか、売り込んでいたのではあるまい」
「そのまさかです。彼には既に10万ドルを、ポンとくれてやりました。
もっとも、その家族を含めれば、30万ドルほどになりましょうか」
「10万ドルの美少女か……何たることよ」
長官は、(まなじり)を押さえ、
「この娘を、どうにかしてやりたいものよ」と、贈り物とされた悲運の少女に、涙した。
「彼女の兄、ユルゲンが近いうちにコロンビア大学のロシア研究所に招かれる予定です」
充血した目を見開きながら、長官は、
「あの外交問題評議会(CFR)の息のかかった、ロシア研究所!
連中は見えざる政府として、この50有余年、我が米国の外交を好き放題してきた連中だぞ!」

 CIA長官は、ニューヨークに本部を置く民間研究機関が、米国の対外関係を牛耳っている事実を、嘆いた。
ソ連スパイと近しい容共人士の息が掛かったルーズベルト政権への、人材派遣の本部。
対日戦争を進めた、太平洋問題調査会に関係する石油財閥が作った伏魔殿の一つでもあった。
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