暁 〜小説投稿サイト〜
星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
敢闘編
第五十七話 思惑 T
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
帝国暦484年1月10日13:15
ヴァルハラ星系、オーディン、軍務省、宇宙艦隊司令部、エーバーハルト・フォン・ヒルデスハイム

 この建物に来るのは何年ぶりだろうか…今は亡き父上に連れられて、当主交替の挨拶回りの時以来だから…八年ぶりか。当時は黒づくめの軍服の群れがいそいそと動き回る、この建物の異様さに辟易したものだ。今思うとその異様な印象が嫌だったのだろう、先年の出撃時も此度の出撃時も、この建物に寄る事なくヴィジフォン(TV電話)を介しての命令受領、出撃だった。今思えば何と無礼な事か…。そのせいで、またはそのおかげで私の顔を見知っている者は少ない。下位の者は当然敬礼してくるが、宮廷内の様に時間はあまりとられないのがありがたい…ミュッケンベルガー元帥閣下の執務室まで…あと少しか。やれやれ、場所も忘れているとは…。
「おお、そこを歩いているのはヒルデスハイム伯…いや中将…ああ、今日より大将だな。待たれよ待たれよ」

 聞き覚えのある声に後ろを振り向くと、私に駆け寄ってくるリッテンハイム侯の姿があった。
「これは侯爵閣下。御無沙汰しております。息災でお過ごしでしょうか」
「息災息災、それより卿こそ息災で何よりというもの…此度の武勲、聞いておるぞ?いやはや、ブラウンシュヴァイク公も鼻が高かろうて」
「武勲…とは?何の話でございましょう」
「そのように謙遜せずともよい…イゼルローン要塞は取られたが、叛徒共の艦隊を一つ、見事撃攘したという話ではないか」
「確かに叛徒共の艦隊を撃攘…殲滅致しましたが、当初の要塞救援という目的を果たせず、恥ずかしい限りでございます」
「増援を出し渋ったのは軍の不手際であろう?そなたが気に病む必要はない。新たな武門の誕生、これ程嬉しい事は無いぞ」
「…お褒めの言葉、まことに有りがたく存じます…ところで侯爵閣下は、この軍務省に何ぞご用の向きがお有りでございますか」
「うむ。ご用もご用…と、そういえばそなたは何処へ向かっておるのだ?」
「ミュッケンベルガー元帥の執務室にございます。帰還の報告をせねばなりませんので」
「そうか、それなら丁度良い、余も元帥の執務室に向かう所よ。ご同道願えるかな?」
「それはもう」
まさかリッテンハイム侯とはな…。となるとブラウンシュヴァイク公もここに現れるか、既に来られているか、のどちらかだろう…しかし何の用だろうか。まさか、いやまさか…。



宇宙暦793年1月11日13:00
イゼルローン回廊、イゼルローン要塞、中央指揮所、
ヤン・ウェンリー

 うん、暇だな。勤務中は暇なのが一番だ、こんな時は『銀河連邦建国史』でも読んでいるのが一番だ。どこまで読んだかな、そうだ、ラグラン・グループ結成の辺りだったな…。
中央指揮所での勤務は立直制だ。副官はキャゼルヌ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ