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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
敢闘編
第五十七話 思惑 T
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い。
「参謀長は今までこういう経験をなさった事がありますか?」
「いや、記憶に無いな。何か伯爵への伝言、いや、内密の頼み事でもあるのか…」
「参謀長のご意見が正しいのかも知れません。ラインハルト中佐や参謀長だけではなく、小官もここに同道しておりますし…」
キルヒアイスはまだ尉官だ。佐官である我々ならまだしも、人事局から見れば一大尉に過ぎないキルヒアイスまでこの場にいるというのは不自然だった。
「という事は、我々三人は伯爵の重要なブレーンとして認識されている、という事かな?」
シューマッハ参謀長はそう言って笑った。軍事面ではそうだろう。確かに我々は伯爵を補佐している。だがキルヒアイスや参謀長の言う様に内密の伝言や頼み事となると、それは政治的な領分の物だろう。であれば我々より伯爵の縁者のノルトハイム兄弟などに頼む方がいいのではないか。
「さすがは軍務省人事局だ。コーヒー豆も上質だな、二人共、お代わりを貰わないか」
ちょっと貰って来ます、とキルヒアイスが立ち上がった時、局長室から入りたまえと声がした。

 「人事局長のグロスマンだ。ラインハルト中佐、キルヒアイス大尉、久しぶりだな」
確かに会った事はあるが、廊下で数回敬礼しただけだ。顔を覚えられていたとは…。
「お久しぶりです、中将閣下。本省勤務時はお世話になりました」
「うむ…おお、失礼した大佐。シューマッハ大佐は会うのは初めてだな。まあ皆かけたまえ」
俺達が応接ソファーに座ると、グロスマン中将も俺達の向かいに腰を下ろした。それと同時に隣の部屋からコーヒーセットが運ばれて来る。セットを運んできた中尉が局長室を出ると、グロスマン中将が口を開いた。
「三人共、昇進おめでとう。まあ、伯爵閣下をはじめとしてヒルデスハイム艦隊の主だった者は皆昇進となったのだが」
甘党なのか、中将はコーヒーに角砂糖を四つも入れた。
「伯爵に代わりまして御礼申し上げます…ところで閣下、ぶしつけながら、我々三人を呼んだのは、どの様な用向きでございますか」
コーヒーには目もくれず、参謀長が質問をぶつける。
「大佐は中々せっかちだな…まあいい。…卿等は明日、昇進する」
「…人事局長自らのお言葉を疑う訳にはいきませんが、それは本当でしょうか?小官等は、本日昇進したばかりですが」
「冗談でこんな事を言う訳がないだろう。今日の昇進は艦隊参謀としてヒルデスハイム伯を補佐し、叛乱軍艦隊の撃滅に寄与した結果だ。明日の昇進は敗残のイゼルローン要塞の将兵を無事オーディンに帰還させた功によるものだ。生者に二階級特進はないのでな」
「…ありがとうございます。では伯爵も上級大将になられると?」
「いや、伯は大将のままだ」
「何故です?我等の功は伯爵に帰するものです。我等のみ特別に昇進するなど…」
コーヒーに口をつけながら
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