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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
敢闘編
第五十七話 思惑 T
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多く抱え込み、自らの権勢の維持に役立てている。しかし農奴階級に落とされた人々だって人間だ、意地も尊厳もある。自分達の処遇だって改善したい筈だろう。という事はアーレ・ハイネセンがそうだった様に、彼等は潜在的な反乱階級という事になる。
そんな所に解放軍として我々が現れたらどうなるか。我々の後ろ楯を得た、と勘違いした農奴階級の人々が反乱を起こすかも知れない。となると彼等を鎮圧せねばならない。在地領主達がそれをやればいいではないか、と考えるかも知れないが、それでは在地勢力の協力を得られなくなってしまう。鎮圧する力を持ちながら反乱を傍観する我々は、在地勢力にとっては共犯と同義語だからだ。解放者など、現地の帝国の為政者から見ればそれは破壊行為に等しい。彼等に協力、または懐柔して協力体制を維持しなければ、恒久的な進駐など無理だろう。

 「お分かりでしょう?解放軍とはいっても帝国からすればただの侵略ですからね。彼等にしてみれば我々は農奴と変わりません、農奴階級が存在していたら我々はその協力者という事になってしまう。面倒ですよ」
「しかし、そういう人達は助け出さなきゃいけないだろう?」
「段階的に、ですよ。残念ですが今はその段階ではない。だから彼等がいなくて幸運だったんです。帝国人にとって農奴階級とはその境遇に同情する事はあっても、庇護すべき存在ではないんです。五百年近くそういう社会体制をとっているのですから。地球時代の奴隷制度と同じですからね。生かされているだけましですよ」
「嫌な言い方をするね…」
「あえてこういう言い方をしました、申し訳ありません」
「いや、いいんだ。私だって分かってはいるんだ。ただ他に方法は無いものかと思ってしまうんだ」
「そうですね…同盟と帝国の邂逅、これが戦闘であったのが現在の情勢のそもそもの発端です。そしてダゴン星域会戦。同盟は予想していた出来事でしょうが、あれで負けた事によって帝国は引くに引けなくなってしまった」
そうなんだ、発端がいけない。そこから百五十年…。人類同士で争う、地球だけに人が住んでいた頃と何ら変わらない。人は社会的機構を備えると他を許容できなくなる生物なのだろうか…。




帝国暦484年1月10日16:15
ヴァルハラ星系、オーディン、軍務省、人事局、
ラインハルト・フォン・ミューゼル
 
 今日付で俺は中佐に、シューマッハ参謀長は大佐に昇進した。キルヒアイスも大尉に昇進した。叛乱軍艦隊撃滅に功あり、という理由だった。辞令書を渡され、艦隊事務室に戻ると、ヒルデスハイム伯がもう一度人事局に行け、という。それから一時間半、人事局の応接室で待たされている。俺もキルヒアイスもしばらく軍務省で勤務していたが、今まで人事局の応接室になど入った事もないし、そもそも人事局に昇進以外の件で呼ばれた事もな
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