敢闘編
第五十七話 思惑 T
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うか。軍人として平和を勝ち取りそれを次世代に受け渡す…無責任な事だろうか?
「どうせなら、戦争を続ける気が起きないくらいまで叩く。それでこちらの主張を認めてもらう。後は少しの寛容を。せめてそれくらいしないと平和にはなりませんよ」
そうか。ただ講和や和平ではなく、結果は同じでもそこに至る過程が大事という訳か。
「なるほどねえ。だが民主共和制と専制による絶対君主制、という対立構造は残る訳だろう?この二つは相容れないと思うんだが」
「相容れなくても構わないんじゃないですか?小官は多様な価値観こそ民主制の真髄と思うのですが…。隣の家同士、近所付き合いをする。その時隣の家の内情にわざわざ口を出しますか?相談されれば別ですが、同盟と帝国、互いがその相談相手になれればいい、と思っています。それには我々が政治犯のままではいけないんです。反乱者という立場ですから、我々の価値観を認めてもらわねばならない。認めてもらって、そして向こうの価値観も認める。一朝一夕に出来る事ではありませんがね」
「どれだけ他人に寛容でいられるか、という事か…まさかそのためにアムリッツァ星系に進出したのかい?」
「まあ、そうです。だからアムリッツァ進出前の会議で述べた事は嘘でも何でもないんですよ」
同盟の、民主共和制の価値観を、帝国の民衆に受け入れられるかどうか試す、という事か。
「受け入れられるだろうか」
「我々が解放者という顔を見せている限りは大丈夫でしょう。現状、アムリッツァの人々は逃げ出す手段を持ちませんし、現地を統治する貴族と話し合い今後を決めていけば大丈夫ではないでしょうか。主だった貴族としてチャンディーガル総督にダンネベルグ、カイタルにクラインゲルト、近隣の星系にミュンツァー、バルトバッフェルという在地領主がいます。彼らは農奴階級を保持せず、比較的話の分かる貴族であるという報告が来ています」
「農奴を保持していない…開明的な人達なのだろうか?」
「辺境ですからね…彼等は在地領主です。惑星や領地開発にはまず資金が必要ですが、いわゆる大貴族、門閥貴族ではない彼等にはその資金がない。インフラ、物流、教育、産業…どれをとっても帝国中枢部より数段劣る。劣るゆえに投資の動きもない。だから労働力は農奴に頼るべきなのでしょうが、資金がないため維持出来ないのでしょう。でも農奴階級がいないのは幸運でした」
「何故だい?」
何故だ、と聞いたが理由は推察出来る。
農奴階級とは政治犯や共和主義者など、何らかの理由で平民より下の階級に落とされた人々やその眷属、子孫達だ。平たく言えば奴隷、という事になる。国父アーレ・ハイネセンがそうだった。人間として恥ずべき事だが、奴隷なので物として扱われている。その上給料を払う必要がないので余計な人件費がかからないから労働力としては最適だ。大貴族ほど彼等を
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